海底都市マールダウン ①
グランデール海溝。
私は今そこの海底にいる。マクロさんから言われた素材はゴロゴロと転がっていた。
ここは深さはわからないが来るのに二時間かかった。結構速度を出して二時間なので結構な深さなのだろう。
「それにしても冷える」
寒いのは当然だ。ここは海底であり、深海。日の光が届かない永遠の闇に包まれたところだ。暖まらないのは当然だといえる。
そして、この深さともなると生物も殆どいない。
「鉄のピッケルとかぺしゃんこだし…」
鉱石を掘るために持ってきたが一気にぺしゃんこになるのならどう掘ればいいのだろうか。
とりあえず水魔法で攻撃し、鉱石をちまちま掘っていく。
これを数回続けるのか…。
「ん?」
私は気配を感じて振り向いた。
暗くて見えない。ライトの魔法で照らしてみたが誰もいない。
が、しかしなんかいるな。見られている。視線を感じる。
すると、その瞬間尖った石がこちらに向けて飛んできた。
魔物、か?飛んできた方向目掛けて水の魔法を放つと若い女性の声が聞こえる。
「ひ、人ぉ? こんな海底に人が住んでるのか?」
すると、私の周囲が光り出す。
ライトを手にして、槍を構えた人…下半身が魚の人…人魚が私を警戒していた。
「我々の資源を横取りする者よ!直ちに行動をやめ降伏せよ!」
「降伏、降伏ねぇ」
私は手を上げ、降伏の姿勢を見せる。
その瞬間、一人の女性が近づいてきて、縄を取り出し私をグルグル巻きに…。だが、私はグルグル巻きにならない。体が液体だし縛ろうとしても無駄。
「隊長! なぜかわかりませんが縄で縛れません!」
「なんだと?」
「なんもしないからこのままついてくよ。しょうがないな」
人魚の住処とか超気になるし。
隊長が少し悩んでいたが、決めたようでついてこいと言ったのでついていくことにした。
私が目にしたのは驚く光景だった。
いや、人魚を見た時点で想定はしていたが…。
「海底にこんな文明が栄えているなんて…」
街があった。海に包まれた街。
建物もきちんとあり、店もある。広場みたいなとこを通ったとき、メルセウス様の像もあった。
なんだここは。なんで海底にこんな文明がある?
「…すごい」
私は堪らずそう呟いた。
海底は人の手が及ばない場所だ。だから、ニホン国もここの存在には気づいていないだろう。
どんな風に栄えてきたか超気になる。
「ここだ」
と、一つの建物の前についた。
中に入ると、槍で撃ち合う音も聞こえる。ニホン国でいう騎士団と同じ…。
それに、王城もあるように見えた。王も存在する。
すごい。海底でもこんな文明が…。
「入れ」
と、案内されたのは一つの部屋だ。
無論ここも水で満たされているが…。取調室、みたいな雰囲気がある。
私はとりあえず入ることにした。
「まず率直に聞こう。なぜ人間なのだ?」
「ああ、気になってたんだ」
「人間がこの深さにくると普通はぺしゃんこだ。なぜ無事だ? なぜ槍が貫いたのに死んでいない?」
「質問が多いね。ま、一つずつ答えると私の体が液体、それと、深海まで来れたのは種族が関係してるから」
「種族?」
「メルセウス様の眷属なんだよ。私って」
そういうと、隊長らしき人は後ろに下がって扉にぶち当たる。
やはり、この人魚たちはメルセウス様に敬服を抱いている。メルセウス様の眷属と暴露すれば好待遇になるだろう。
「嘘をつくな!」
「嘘じゃないって。メルセウス様と話せばわかるよ。ね? メルセウス様?」
「見てるのバレましたか」
と、扉を開けてメルセウス様がでてくる。実体があって出てこれるのは初じゃないだろうか。
「実体化できるのは海の中だからですよ。それに、人魚さんたちの信仰心が強いので顕現出来るだけです」
「やっぱ信仰が強いほど姿を表しやすいんですね」
「そういうことです」
私たちが話していると人魚たちが集まり、かしずいていた。
「いいんですよ。紹介してなかったのですがこちらが私の眷属です。仲良くしてあげてくださいね」
「はっ、勿論でございます。メルセウス様の言うことであれば」
「そんな気張らなくていいですよ。あなたたちは天空神より賢いので…。ほんっと、天空神よりは私を敬ってるので」
と、天空神に対する憎悪が感じられる。
「…では、私は忙しいので。ああ、パンドラさん。しばらくローキッス借りますよ」
「どうぞどうぞ。多分魔王城でゴロゴロしてます」
「はい。たまに見てるので…。天空神のバカがローキッスにもいらんこと吹き込んだので一緒に…」
と言って消えていった。こっわ。




