やせいの一年生があらわれた!
イベントが終わり、少しの日時が経った。
「夢野! お前がこの学校で一番頭がいいんだってな!」
と、学校の廊下を歩いているとそう呼び止められる。
ちらっと横目で見ると一年生のようだ。呼び捨ては別にいいがそれで私から注目を浴びれると思わないでもらいたい。
私はその男の子を無視して教室に戻ろうとすると、肩を掴まれる。
「無視するんじゃねえ!」
「はぁ…」
仕方ないので付き合ってあげることにした。
私は立ち止まり、男の方に向く。
「俺は一年の青山ってもんだ! 夢野! 俺と勝負しろ」
「断る。それに、先輩に向かって呼び捨てとか私じゃなかったら切れてるからね」
そういって立ち去ろうとすると。
「俺に勝てる自信がないんすか?」
と、安っぽい挑発をしてくる。無論、そんなガキみたいな挑発に乗るわけがない。面倒だなこいつは。潰してやりてえ。
面倒なやつに絡まれたもんだな私も…。
「ああそうそう。自信ないからやめとくわー。じゃ」
「ちょ」
「上下関係とかなんもわかってないあんたに負ける自信がないからやめとくってことだぞ。理解しておけよ?」
「はあ!? あんたなんか…」
「入試で満点で合格できない奴が何言ってんだ」
先生方から聞いていた。
優秀なやつはいるけど満点取った人は今年含めて誰もいないってな。私ももちろんとってない。あえてとらなかった。だって挨拶とか面倒だったし…。先生方も入試で手を抜いたやつと私が有名になっている。あと、テスト満点ロボットとかで。
「いいから俺と勝負しろってんだ! おい!」
「こんなか弱い女子にムキになっちゃってやーねぇ」
「…! お前腹立つなぁ…!」
「あははっ! 怒りの表情浮かべたって怖くないっての! 怒ったところでどうにもなんないしあんたが怒るのは筋違いだからね」
と、言い残して私は去ろうとすると、また肩を掴まれる。
「いいから勝負しろってんだぁ!」
と、泣き始めたのだった。
だっせえと思いつつ、これ以上絡まれるのも面倒なので仕方ないから受けてあげることにした。
近くの先生に手ごろなテストがないかと聞くと今年の入試問題があるらしい。
今年ということはこいつが半ば有利だが、ま、ハンデとして別にいいか。ちょっと付き合ってくれないかというと先生は二つ返事でオーケーしてくれた。
先生も無謀だって思ってるっぽく、手加減してやれよと言われた…。
ま、手加減はしないがな。
テストが始まり、私は順調に解いていく。
難しいっちゃ難しいがそれほどでもない。書く時間含めて三十分もあれば余裕で終わるのだった。私は鉛筆を置き、窓の外の景色を眺める。
後輩はまだ解いているようだ。頭をおさえつつ考えながら解いている。遅い。
「夢野は終わったのか?」
「あ、はい。もう採点していいっすよ」
「そうか。わかった」
教師は私の答案を持っていき採点し始める。
つってもたぶん大体正解っていうか、今回ばかりはケアレスミスとかをなくしたので満点なはず。
「終わった! 俺も終わったぞ!」
「はいはい」
と、先生が答案を回収していった。
「早く解くっていうのがいいってわけじゃないぞ。見直しとかきちんとしたのか?」
と、にやつきながら余裕の笑みだ。
十分後にはどちらの採点も終わったらしく答案を返された。私の数字は100と見事なまでの満点。そりゃ完璧にやったし。
「わかってたが夢野の勝ちだぞ。今年やった問題で青山はまだ記憶があるだろうに…」
「なっ…」
「残念、満点。あんたはところどころ間違ってるじゃん。私に喧嘩売っておいてそれ!? だっせーの! こりゃ笑うしかないでしょ! あはははははっ! だからやるのが嫌だったのにさ! ずっと井の中の蛙でいればいいのにさ!」
そう煽ってやるとぷるぷると震えだした。
「高校首席で合格したからってそういう態度とるなよ。みっともないぜ?」
「うるせえ!」
「どうせ内心では進学校に受かった自分偉い! これでいじめられることもなくなる!とかそう思ってんだろ?」
「なっ…違う!」
図星か。
「あんたがいじめられる原因ってその性格だよな。なにを偉い奴ぶってんの? 礼儀というものを知らんのか。あんたは私に偉そうな態度とってたし呼び捨てにされてるけど私はあんたの友達かなんかだったのか?」
「違う!」
「違わない。同年代なのにそんな上から目線でイラつかないと思うの? 先輩を呼び捨てにしてそんなけったいな口まできいて怒られないとでも思ってんの? 頭悪いね。君は」
「夢野。そこまでだ。あとは俺が言うから…。あんただけは口出しするな…」
「えー、責め立てて心折るぐらいの心構えだったのに」
「それがいけないんだぞ夢野」
と、強引に教室の外に出された。
くっ、説教してやる予定だったのに!




