バスに乗ろう
翌日にお姉ちゃんたちは帰っていき、私は駅前まで送った。
コンビニに寄り、飲み物を買う。
「いやあ、夢野ちゃん髪伸びたねー」
「最近切ってないですからねー」
私は肩まで伸びた自分の髪を持ち上げる。前髪程度は邪魔になるから私自身で切っているが…理容院にまでいくのが怠くて切ってないんだよな。
しょうがない。切りに行こう、
私がいつも切ってるのはこの町の美容院。だけど今日は気分を変えるために隣町に行こう。そんな気分だった。たまには違う美容院も悪くない。
「電車だとろくなやつに会わないから今度はバスでいこ」
私は近くのバス停にいき、ちょうど来ていたバスに乗り込んだ。
席は充分に埋まっており、私は手摺りにつかまり立っていることにする。その瞬間だった。
ジョキンと何かが切られる音が聞こえた。
思わず振り返ると、ハサミを持った小さい男の子と、なんだか顔を青ざめさせている母親。
私は髪を触ってみると私の髪がばっさり切られていた。
「すみません!うちの息子がっ…」
と、母親の方は平謝りだった。小さい男の子はおもしれー!と笑っている。
周りはピリついた。私が怒るんだろうということを予測してるのか。
「すみません、すみません! べ、弁償しますのでっ…」
「あー、いや、別にいいっすよ。隣町の理容院行くとこだったし別に普段私ショートでこんくらいの長さじゃないし坊主でもなんでもいーんで」
「でも…」
「でもというなら切られた私の髪を掃除してくださいね。バスの会社に迷惑なんで。あと坊やも、お姉さんを練習台にしないで人形とかにしなさい」
私は坊やを撫でてやる。
小さい子のしたことだから、とかそういう理由じゃない。どっちにしろこんくらいは切る予定だったしファッションはあまり気にしない。
「せ、せめてこれ理容院代に…」
と、財布から金を出してくるが私は拒否した。
その瞬間、後ろからぶっと笑う声が聞こえる。
「おばさん、もういいって言ってんですからいいじゃないです…か…ぶふっ」
「…おい、なんでお前がこんなとこにいるんだ白露」
「あはは!パン子にロングとか似合わないな!」
と、同じショートの髪型の白露が珍しく大笑いしていた。
白露は大笑いしながら見ている。周りは白露に引いていた。
「白露、入院してから性格変わったか?」
「変わってない!だが、パン子はどこにいってもこういう輩と出会すなと思ってな」
「悪うござんしたね。おら、てめーも笑った罰だ掃除しろ」
「わかった」
「そこは嫌だって言えよ…」
白露は私の髪を集める。
「これをどうすればいい?」
「…自分で言うのもなんだけど呪われてそうだから早く捨ててくれ」
私がそう言うと白露はカバンに入っていたであろうビニール袋に包んだのだった。
「ま、坊主もこんなことあまりするんじゃないぞ。で、パン子、どこいくんだ?ついてくぞ」
「白露、用事があって乗ってたんじゃ?」
「いや、用もなしに暇だから適当にな」
「…金の無駄遣いじゃねえか」
私はため息をついて、白露が座っていた席に座った。




