姉のコンプレックス ⑥
月乃の部屋で、二人は正座していた。一方私は月乃のベッドに寝そべっていた。
「楽にしていいですよ。これ、お菓子です」
と、月乃がお菓子を持ってくる。私にはヘッドギアを持ってきた。
「パン子、なんか最近ちょっとだけラグがあるのよ。見れる?」
「ん? じゃ、ちょいと工具貸して」
「はい」
と、工具を手渡されるので月乃のヘッドギアを開けた。
月乃のヘッドギアは結構お高めのやつだ。が、メンテナンスこいつ怠っていたなっていうのが一発でわかる。
ラグがあるのはしゃあないよ。
「月乃、ちゃんとメンテナンスはしような。白露ほどじゃないけど結構埃溜まってるぞ」
「うっ」
「埃が機械の隙間に入ってそれでラグが起きてるんだなー…。ま、取り除けばラグはなくなるし買い替える必要ないからちょちょいととってやるよ」
私はピンセットで埃を取り出す。
ま、これぐらいでいいでしょ。
「ありがとね」
「メンテナンス怠ると最悪白露みたいになるからちゃんとメンテナンスしなよ」
というと、二人も固まっていた。
「わ、私たち買ってから一度もメンテナンスしてないよ…」
「お、俺もッス…。帰ったらしないと!」
「眠、メンテナンスって何日に一回したほうがいいの?」
「うーん、一か月に一回はしたほうがいいかなー。目安としてはね。二か月に一回でも…」
「帰ったらすぐする! アッキもね!」
「うっす!」
どうやら二人は二か月以上メンテナンスしてなさそうだ。
ヘッドギアは最新の奴ほど結構耐久性あるんだけど埃とか詰まってるとたまにオーバーヒートしてしまって頭を火傷するってこともある。それが危険視されているし、実際に危ないのでメンテナンスは重要だ。
私はちまちまと一か月に一回はしてる。
「ま、そんな丁寧じゃなくていいからね。配線切れてたりとかしたら普通は直せないし、埃だけ取り除くだけでいいから。最近じゃ水洗いできる機種もあるしそういう機種なら水に二分つけるだけでいいんだけどねー」
「私もそっちにしておけばよかったわ…。性能で選んだのは完全に失敗ね」
いや、性能がいいならそっちにすべき。
防水性の奴は結構性能ひどいものとか普通にあるし、開けるには専用の工具が必要だから壊れたら即買いなおしだし結構コスパが悪い。
防水性がない奴は配線が切れた以外はほとんど直せる。
「ってか月乃、ベッド変えたのね」
「ええ。前のベッドは汚れたのよ」
「汚れた?」
「その、ケーキを買ってきて部屋で食べようとしたら転んで。買ってきたケーキが全部ベッドに…。チョコレートのケーキもあったから茶色くなったりとかして落ちなかったのよ。で、ジュースもあったからベッドにしみて…。買い替えたわ」
「すっげえ災難じゃん」
「今度からベッドから離れて食べるわ」
といって月乃はお菓子を食べ始める。
でも、これ新品に近いベッドだ。滅茶苦茶フカフカ。心地よく私を包み込んでくれている。このベッドは安眠できそうだね…。
「…ぐぅ」
「人のベッドで寝たわよアイツ…」
私は夢の世界へ旅立った。




