姉のコンプレックス ③
タツヲミさんは、拳を私に向ける。その瞬間、私はスキルでお姉ちゃんに変身した。
「なっ…!」
「変身できるスキルがあるんだよねー。お姉ちゃんの姿を殴れる?」
「正々堂々やるんじゃねえのかよ!」
「この私が正々堂々となんてやるわけないだろバーカ! どんな卑怯な手も姑息な手も何でも使うのが私だぜ!」
タツヲミさんはさすがにためらっていた。
私は魔法をぶつける。タツヲミさんは頑丈で、体力を削れてはいるがそれほど減っていない。タフなようにステータスを振ってるのか。
「てんめぇ…」
「卑怯だって言われてもいいんだよ! 私は勝ちたいからね。勝つためならなんでもしてやるさ」
「…」
私はそう笑ってみせる。
勝つためにはなんでもする。蹴落としてでも勝ってみせる。私も多分どこか引っ張られている。それがわかったのかタツヲミさんは、覚悟を決めたようだ。
「てめえらほんと似たもの姉妹だな!」
「それはなんとなく私もわかってるよっと、あぶねっ!」
拳が勢いよく飛んできた。
は、白露よりは遅いからなんとか躱せるけど…。でも、それなりにレベルもありそうだな。骨がありそうだ。
と、殴ってきたかと思いきや、今度は蹴り上げてくる。
「ふひっ、残念、私と言葉を交わした時点で攻撃が当たらないんだよー!」
「くそっ! やりにくいぜ!」
「あははははっ! やりづらそうにしているのは見ていて面白いな!」
私は攻撃を躱す。
運動神経じゃない。先を読む。相手の動きだけに注目し、どんな行動をするかを予測すればおおよそ未来が見える。
「埒があかねえ! こうなりゃ…」
と、掴みかかってくる。
そろそろキレる頃だとは思っていた。じれったさを感じて掴みかかってくるだろうと思っていた。何もかも手のひらの上なんだぜ?
タケミカヅチとかいう私の予想外な攻撃しかしないやつは例外だが基本誰でも先読みはできる。私と親密であればあるほど先読みできないんだよな。なんでだろ?
掴み損ねたタツヲミさんは、よろけて転ぶ。そして、ちくしょうといいながら立ち上がった。
「じゃ、次は私からの攻撃ね」
私はボタンを押した。
その瞬間、タツヲミさんの足下が爆発する。爆発がタツヲミさんを包み、タツヲミさんはかろうじて立っているが瀕死になっている。
「カイハの爆弾の威力やべー!」
「なっ…」
「ここ、暗いし地面も黒いからわからなかったでしょ? さっき落としておいたんだよねー」
掴みに来るのを待っていたのだ。
ヒットアンドアウェイのように、攻撃しては後ずさるからやる隙が無かった。押してもよかったがそれだと私も巻き込まれる。
だからこそ掴みかかってくるのを待っていた。
「それじゃ、また遊ぼうね」
私はタツヲミさんの胸元に氷の刃を飛ばした。
氷はタツヲミさんの心臓部分に当たり、地面に倒れ、ポリゴンとなって消えていく。
「タツヲミっ…!」
「さ、お姉ちゃん。タツヲミさんを迎えに行きなよ。さすがに手をかけたくないからさ」
「…」
お姉ちゃんは出口を目指して走っていったのだった。




