どうすれば勝てるのか?
私は自分のダンジョンに戻ることにした。
聖杯を返した今も、自分のダンジョンがある、ということはまだ私は王のままだということだ。
聖杯がある限り王だとは思っていたが、その考えはもしかしたら間違えかもしれないな。
「じゃあ王である条件っていったいなんだ? 王はなぜいるんだ?」
疑問しかない。
聖杯は一度自分の手元にない状態になった。聖杯が王である証であるならば、その時点で崩壊が始まっているだろう。
訳が分からない。それに、神の食器を盗んだだけで王になれるというのは些か条件が甘すぎやしないか? 無作為に選ばれたというが…。本当に無作為なのか?
「ミキ先生に聞いたら何かわかるかもしれないか」
ミキ先生はたしか一つ王が作ったダンジョンを踏破しているはず。
私はミキ先生を近くの喫茶店に呼び出した。
「私に聞きたいことって?」
「単刀直入に言うと、先生が踏破したダンジョンについてです。食器を奪ったあと、ダンジョンは崩れましたか?」
「崩れてはいないけど、地形は変わったかな? パンドラさんほどじゃないけど複雑に…」
「…なるほど! わかった!」
「なるほどって?」
「今、ミキ先生も一つのダンジョンの王になってるんです! ミキ先生が踏破したダンジョン…たぶんそれはミキ先生のダンジョンです」
「ほえ?」
なるほど。
この食器を手にしたものが王ということだ。神の食器を今現在手に持っているのが王。だから移り変わるんだ。踏破して終わりじゃない。自分が王になることも可能なんだ。
私たちは今まで王を倒したら終わりだと思っていた。聖杯などの神の食器を集めるだけだと思っていた。
違う、そうじゃない。このイベントは最後に神の食器を手にしていた人たちが勝つんだ。だから無作為で選ばれた。
「この仕組みが分かればミキ先生も狙われると思いますよ。地形が変わったのはそれはミキ先生が王になったからです」
「よ、よくわからないけど…あのダンジョンは私の心の中って感じなの?」
「そうっぽいですね。早いところ玉座に座って防衛でもしなくてはなりませんね。ちなみに神の食器はどこに?」
「え、えっと…。私が拠点にしてる魔王城の自分の部屋、かな…」
おう無防備! いつ奪われるかわからないじゃないですか!
「イベントリにしまえなかったから置いておいたんだけど…。ようするにあれを集めるんじゃなくてあれを最後まで手にしていたら勝ち、なの?」
「その通りです。盗まれるかもしれないから急いで戻りましょう!」
勘違いしていた。この私が勘違いするなんて…。でも、取り戻せ、という文面が悪い。あれじゃ集めろと言わんばかりのものだ。
取り戻せというのはどういう意味か。それはきっと王に選ばれなかった人たちが自分がのし上がるために取り戻せということか? 知らないけど。
「七つの神がいて七つの大陸、食器が何個あるかは知らないけど結構王はいそうだな…。みんな勘違いしてないといいけど…」
「してるんじゃないかな。奪われた人も勘違いしたまま奪い返しに来そうだね」
「だからみんな困惑するんだろうなぁ…」
私たちは急いで魔王城に向かった。




