福井警部のその後
爆発で受けたダメージを残したまま、魔王城の書庫に戻る。
すると、「よう」と話しかけてくる日下部さんと空知がいた。
「なんでいるの?」
「いや、なんつーかな。お前にも福井警部のその後を話しておこうと思ってな」
「私は単なる付き添いー」
「最近空知に付きまとわれちまってよォ…。俺の妻が勘違いするから離れろつってんのに…。この前も誤解受けたじゃねーかよ」
「いいじゃんいいじゃん! 今の警察で信頼してるの日下部さんだけなんだしー?」
ということだ。
まあ、信頼云々は別にいいとして。福井警部のその後か。気になるっちゃ気になるな。私は日下部さんの対面の椅子に座る。
聞く気があると判断したのか、日下部さんは口を開いた。
「福井警部は殉職っつー扱いになった。騒動を起こしていた犯人と鉢合わせて殺されたっていうことになってる。警察で殉職は二階級特進。つまり警視正になったっつーわけだ。気に食わないことにな」
「ナニソレ!? 犯人は福井警部でしょ!? なのに殉職ってどういうこと!?」
「空知。納得いかないのはわかるが少し静かにしろ。ここは書庫だ」
と窘められ、空知は口を閉ざした。
「犯人は魔法を使える奴ら…。とされた。大地の勇者が重要参考人として連行された」
「…」
「俺と空知はまだ魔法を使えるってことを言ってない。だから疑われていないが…。大地の勇者はテレビで魔法を使っていたことも報道されていた。容疑は免れなかっただろう」
ふぅん。
まあ、たしかに異世界から何かが来たのなら魔法で開けたことを想像するだろう。魔法を使えるものが怪しいとなるのは当然かもしれない。
「福井警部はなんで疑われないの…? 犯人はアイツなのに…!」
「証拠がないんでしょ。死んでしまった以上本人の自白は取れず、魔法を使えるかどうか確認する術がない。それに、私が腹部を貫いたから大きな穴が開いて自殺とは取れず、殺人事件として捜査されてるんだと思うよ」
「パンドラが正解だ。本人が死んでしまっている以上、魔法が使えるかどうかが定かではない。とぃうこった。なんつーか、誰も報われねー話だ」
と、日下部さんが愚痴をこぼす。
「これだから警察は嫌なんだよッ! おかしいじゃん! 大地の勇者が魔法を使えるからって容疑者扱いしてさ!」
「容疑者扱いではないが…。だが俺に考えがある」
「考え?」
「大地の勇者をこっちに来させる。こちらなら日本の警察は手出しができないし来れたとしても日本の法律で裁くことはできねえ」
「あ、それいいかも! さすがおっさん!」
「だが、出入り口が707っつー人が多いところが難点だ。それも服売り場の近くだから余計にな。遠ざけられたらいいのだが…」
たしかにあそこじゃ人目につくわな。
ボヤか何かでも起こせばいいのだがそれもそれで営業妨害。法にも触れずに人通りを少なくさせるには…。
「空知が人気アイドルになって、とか?」
「あはは。すごい冗談を言うんだな」
「イイネそれ! 私乗るよ」
「俄然乗り気!?」
「もともとアイドルみたいなことはしてたし復帰ってことで707でライブを行うよ! これでも人気だったんだよ?」
「そ、そうなのか。俺ぁ知らなかった」
「流行に疎いだけデショー? アイドル空知ちゃん。また再始動ッ!」
と、意気揚々に宣言したのだった。




