メルセウス様の美的感覚
私は玉座の間に座る。
この聖杯は何の効果があるんだろう。そう思っていると目の前にメルセウス様が現れたのだった。メルセウス様は私の姿を見るとはぁと呆れていた。
「あなたが持っていたんですか私の愛用のグラス…」
なぜここにいるんだろう。
「なぜメルセウス様がここに?」
「神々も自分が愛用していた食器がどこかにいってしまったので探してるんですよ。創造神様は大層お怒りで”私の野菜スティック用のまよねーずが奪われたぁ!”と嘆いておりました」
「アトラクス様…」
「まあ、私も私でそのグラスは並々ならぬ愛情を込めていたんですがね…。パンドラさんが持っていてよかったです。返してくれませんか?」
「あ、いいっすよ」
私はグラスを手渡した。
メルセウス様は嬉しそうにその聖杯にほおずりをしている。どんだけ愛を込めてるんだよとつっこみたいがまあいいだろう。
私がすんなり返したことにワグマは驚いていた。
「そんなすんなり返すの!?」
「だって持ち主に返すべきでしょ」
「私の場合は手放したくないとか…」
「造形美がすごかったから」
というと、その言葉に反応したのか、私の方にまた視線を向ける。
「この造形美がわかるとはさすが私の眷属です。いいですよねぇ、この造形美! フォルム! 私が創造神様に作ってもらったんですよ! ああ、そうですね、私の眷属のためです。今私とおそろのやつ作ってもらいますね!」
とテンションアゲアゲでどこかに消える。
数分後、また戻ってきたかと思いきや、同じ柄の聖杯を私に手渡された。だが、メルセウスという名前は彫られていなく、パンドラという文字が彫られている。
創造神がこれ作ったの? メルセウス様いつにもましてテンション高いな。
「お揃いですよ。やはり私と私の眷属の好みは似るのですね。嬉しいです、誰もこの造形美を理解する人がおりませんでしたから…」
「これはわかる人にしかわからない造形の奥深さがあって、メルセウス様を現すように大波のように激しい感じもあれば静かなところもある…」
「わかってますね! それが溜まらないんです! ああ、戻ってきてよかった…! では、パンドラさん。また語りましょう!」
といってどこかに行ってしまった。
メルセウス様も普通な神様だなあと思ってたけどこんな面があったとは。驚き桃の木二十世紀だ。ネタ古いか?
とはいえ、私も私でこの造形の奥深さが好きなのは事実。なんだろう、私の好みにぴったりの造形なのだ。これも私の心せいか?
「なんていうか、メルセウス様意外と好きなものには一直線ね」
「誰よりもガチで探してそうだったな」
他の神の様子は知らないけど。




