注意人物は
ワグマが仲間に加わった。
とはいえあったからこない限りこちらで暇なんだが。それに、私は外の情報を知らない。
「ああ、王から神の食器を取り戻せってイベントよ。王は無作為でプレイヤーの誰かから選出されるらしいのよ。もちろん、王も他の王から盗みを試みることもできるそうよ」
「へぇ…」
「ただ、このイベント、取り戻しに行く側はNPC連れて行けないらしいわ」
となるとワグマが一人の理由はレブルを連れてこれなかったということか。
レブルはNPCだ。連れてこれない。
「だけどミキ先生ログインしてるみたいだしミキ先生なら全部突破しそうじゃない?」
「あの人白露と並ぶくらいには運動神経あるからなあ…」
前に白露との柔道の練習を見ていたが、あの白露が本気になってかかってやっと倒せたって感じの人だ。つまりそういうことだ。
ミキ先生と戦い合いになったら互角、あるいは敗北の可能性が高い。勝てたとしてもこちらの消耗が激しくなるだろう。どうにかして味方に付けたいが…。
「ミキ先生はわりとマジで攻略狙ってくるかもしれないから…。やばいな」
「あの人運動神経もそうだけど頭も相当キレるわ。パン子ほどではないけど」
「だから嫌なんだよ。頭も良くて運動もできるって馬鹿じゃないの?完全無欠の主人公とかラノベかよ」
ただ、ミキ先生の弱点をつけばいいだけなんだが、それができるスキルはない…。いや、あるわ。
そういや仲間にあいつがいたな…。あいつに変身すればいけるか? ただこれは本当にしたくないし、最悪ミキ先生を傷つけかねないが。
「白露は入院中で出来ないしレブルはこれない。ミキ先生だけよね問題は」
「タケミカヅチも相当厄介だ…。あいつは私のことを分かりきってる」
いつそんな観察していたのか。いや、時折視線は感じたが…。なぜこちらを観察していたのか。
もしかして私のこと好きなのか? いや、それは思い上がりだろう。私の弱点を探ってたに違いない。くっ、観察されてしまってたか…。
「そういやワグマ、このダンジョンめちゃくちゃ複雑だったのにどうやってきたの?」
「え? あー、なんかなんとなくわかったって感じね。何故かは知らないけど…」
「惹かれあった…。いや、知らないうちに私の心が現れたダンジョンだと認識して私のことを分かってるからすんなり来れたってことか」
「パンドラのダンジョン?」
「うん。どうやらこのダンジョンは私の心を表してるみたいなんだ」
壁の頑丈さ、複雑な道。多分そうなのだろう。
「なるほど。友情の力ね」
「友情、努力、勝利の力だ!」
「勝利したのはあんただけよ」
そうでしたっけ?
「でもパンドラの心の中を表したって聞くとたしかにその通りね。捻くれてる感じがしたし性格の悪さが滲み出ていたとてもいいダンジョンだったわ」
「褒めてないよね」
「褒めてるわよ。ゲームとしてはクソゲーに近い面白さよ」
「貶してるでしょ。褒められてる要素が一個もない」
ワグマが貶してくるのは負けた腹いせだろうか…。まあ?私はかんよーだから?これくらいで怒るわけがない。私は慈愛の女神を現したかのような慈愛の心を持ってるから…。
「まあ、八つ当たりはこのくらいにしてもう夜遅いから落ちるわ。王に挑めるのは午後0時から午前0時までって聞いたしログアウトはもう出来るはずよ」
と、ワグマが言う。
現実の時刻は0:39。もう誰も攻めてこれない時間だと言う。
私もワグマに続いてログアウトしたのだった。




