王に選ばれた
白露が入院している病院から帰り、ログインした。
だが少し変だった。ログインすると、真っ暗闇の中にいた。後ろには壁があり、戻れない。
目の前には蝋燭だけで照らされた薄暗い小道がある。
「なんだぁ?」
何者かの罠だろうか。それとも運営のイベントか? だが告知されてなかったような…。最近公式見てないからわからないけど。
私は仕方ないので薄暗い小道を歩いてみる。
まさか行った先に落とし穴があるとかそういう展開はやめてもらいたいが。
先に進んでみると、薄暗い小道の真ん中に何かがあった。いや、鎮座していた。
どうみても椅子だ。だが、簡素な作りではなく、王が座るような豪勢な装飾があしらわれ、禍々しい雰囲気を感じ取れる。
周りにはこれ以外なにもなく、ただただ私に座れと言わんばかりである。
正直怪しい匂いしかしないのだが…。
「ま、座る以外の選択肢はないわな…」
私は仕方なく玉座に座る。
『魔王軍最高幹部、パンドラが王に選ばれました。メルセウスの聖杯が渡されます』
というアナウンスがされる。
王? 聖杯? 訳がわからん。だが、任命された…ってことでいいのだろう。
私はため息をついた。
『護衛のための仲間を一人連れてくることができます』
と、ずらーっと魔王軍に所属しているNPCの名前がずらーっと並ぶ。
ユウナ、アンジュ、サルタン、パライゾ、レブル、カイハ…。ふーむ。安定でいうとレブルだろうけど仕掛けを作るなら…。
そうだな、レブルはこの前の日本に連れて行ったばかりだしカイハにしよう。
私はカイハを選択する。すると、目の前にカイハが現れた。
「…ここはどこだ!? 俺様昼寝してて…」
「おう、私だっての。ここは私も知らん」
カイハは納得がいかないようだが私の隣に移動する。
『では、泥棒に気をつけてくださいね』
と、暗闇が一気に広くなる。
そこは、サイバー的な感じの都市だ。人はだれも住んでいなさそうだが、電気が通っている。
カイハは目を思いっきり見開き、そして見惚れていた。
「す、すげえー! 近未来だ! 俺様こういうのが好きなんだ! マシンが多い! 弄りてえ!」
「たしかに機械好きなら惹かれそうな都市だな…」
「私はここでなにをすりゃいいんだ!? 開発か!? 都市開発か!?」
「いや、物を守るトラップを作って欲しい。人を殺せるぐらいの威力で」
「合点! 人どころか世界を壊せるようなもん作ってやる!」
と、俄然やる気を出しているカイハ。
カイハは都市を探検してくるといって、工具を片手に行ったので私は聖杯を片手に持ち、カイハについていくのだった。
私もこの都市の地形を把握してどこに罠を貼るかを指示したい。




