お姉ちゃんたちとゲーム
ゴールデンウィーク三日目に家に帰り、ゲームにログインする。
ニホン国の噴水広場の前で待ち合わせと言うので日本から異世界に戻り、噴水広場の前にいくと、現実とうり二つの顔をした二人がいた。
巽 明彦さんと私の姉ちゃんだ。
巽さんはねじり鉢巻きを頭に巻いており、真っ白いタンクトップの装備。お姉ちゃんは袴を着て法被を上に羽織って刀を腰に携えている。沖田総司になりきろうとしてるんだな…。
巽さんは大工って感じがするが…。
「改めて巽 明彦、もといタツヲミっていう名前でやってるっす! 職業は武闘家! 元ヤンだったこともあり自分の拳が一番戦いやすいっす!」
「わかるぞ。私もだ」
そこで同意するな脳筋。たしかに白露も剣とか武器を使うより殴ったほうがいいといっているが、実際なにかを装備した方が威力が上がる。だがしかし、必ずしも素手が弱い、というわけではない。素手用のスキルもあるし、素手というのもメリットがある。
「それで妹さん方は何て名前っすか?」
「あー、私パンドラ。こいつがワグマ、こいつがビャクロ」
私がまとめて適当に紹介する。
と、その瞬間、後ろの人がポリゴンと化して消えていったのだった。突然のことに私たちは驚くが体制を整える。
「あはは! 初心者はやっぱ狩りやすい! すぐ騙されんもんなー!」
「あんたも相当、悪い奴だねー」
と、男女のコンビがPKをしたことを誇るかのように語っている。
私がワグマを見ると、ワグマは許せないというような顔だった。人を普通に殺すようになった彼女でもまだ自分のエゴのために殺すのは嫌らしい。
ビャクロは他人事って言う感じでどうでもいいような感じはしていたが。
「ビャクロ、たたきのめ…」
と、ワグマが言いかけた時、タツヲミさんが突っ走っていくのだった。
タツヲミさんはそのプレイヤーの首根っこを掴む。
「おい、PKしたやつが何誇らしげに語ってんだコラ…殺すぞ」
「あちゃー…。ろくなやつに関わっちゃダメだって言ってるのに…」
タツヲミさんが拘束してる男。その隣ではタツヲミさんをPKしようと剣を構えている女がいた。私は足音を殺してその女の横を通り過ぎる。通り過ぎる直前、私はナイフを心臓付近に刺してやった。
女はなぜ刺されたのか、誰が刺したのかわかってないようだ。そのまま地面に倒れ、ポリゴンと化して消えていく。
「ま、マリイイイイイ!」」
と、男性の方が叫ぶ。
「てめえ! よくもマリイを…」
「あ、やっちゃだめだった? ま、これも仕方ないよね。初心者狩り、楽しいなぁ…?」
私は精一杯の笑みを浮かべてゆっくりと男のほうを向く。
「ひい!?」
「あいつ、殺すことに躊躇わないのか…」
「…まあ、あいつはやるといったらやるっていうか、喜んで人を殺す殺人鬼みたいな性格もありますから」
「我が妹ながらちょっと怖いぞ」
と、後ろでぶつくさ話してる三人。
「さて、タツヲミさん。ちょっとそこよけて」
というと、素直によけた。その隙に逃げ出そうと立ち上がって走るが、私は足に氷を打ち込んでやると、その場ですっ転んだ。
地面にびたんと手をつく暇もなかったらしい。
「逃げちゃダメだっての。ほら、二人仲良くリスポーンしなくちゃね。でないと殺された彼女さん可哀想でしょ」
「て、てめえが殺したくせになに言ってやがんだ!」
「そうだねー」
私はとりあえず男の胸に右手を当てる。
そして、男の後ろと私の後ろに氷の壁を作り逃げられないようにした。しょうがないから一つチャンスを上げようか。
私は持っていた刀をイベントリから取り出した。
「ほら、その刀使って私を殺せでもしたら逃げれるよ」
男は刀を手に取る。
そして、半狂乱になりつつ切りかかろうとすると、動きが止まった。
「な、なんで攻撃できねえんだ!? ああ!?」
「ああ、ごめーん。攻撃できなくなる呪いをかけちゃってた。こっちのミス。私じゃ解呪もできないし…ひどい偶然だね」
「て、てめえ! わざとだろ!」
「私も忘れてたんだよ。ごめんって。悪かったよ」
私は男が落とした刀を手に取り、そのまま刀で切り裂いたのだった。
氷を溶かし、四人がこちらに近づいてくる。
「倒したら勝てるかも、という淡い希望を抱かせて、それが無意味だと知らせて殺すってあんたは鬼か」
「いやいや、希望を持たせることは大事だから!」
「さすがに私も同情するぞ。私がやられても心が折れる」
「さ、さすがに俺も擁護できないっす…。やられてなくてよかった…」
「こんなのがうちの妹だと思うとちょっと嫌だ」
ひどい。ぴえん。




