処刑
あの詐欺師は御用となった。
「ったく、うちらも詐欺師とは縁が深いのかね」
「全く同意」
なんだろう、詐欺師の鼻をくすぐるような何かを持っているんだろうか。
「でも、あの男どっからくるんすかね。この町の人たちをカモにするなんざ…」
「老人も多いこの町だからこそよ。こぞって健康健康というから健康になれるとかのキャッチフレーズに騙されるのよね」
そりゃ天寿を全うしたいからだろうな。病気で苦しく死にたくはない、年老いて死んでいきたいというのがある。それ自体は悪いことだとは思わないが、年老いて死ぬこと、それが良い事かどうかは定かじゃない。
私たちが話してるとまたインターホンが鳴る。私が出てみると、猟銃を構えた人がなにやら笑っていた。猟奇的殺人鬼?
「ありゃ、お孫さんかね? 爺さんいるかい?」
「爺ちゃん入院中で…」
「ありゃ、解体してもらおうと思ってたんだがあてが外れたな…」
「解体?」
「あの軽トラックの中を見てみろぉ」
というので、覗き込むと中には鹿の死体があった。これまた見事な鹿。解体方法は一応は知っている。知識としては叩き込んだ。
「あ、私でよかったら解体できますよ」
「本当か? ならやってくれると助かる。なーに、ちょっと下手でも食えりゃええさ」
というので、猟師の人が座席からブルーシートを取り出す。
お姉ちゃんがなになに?と出てきた。
「あ、熊井さん。また鹿?」
「おう。ずいぶんとでっけえの撃ったんだわ」
「あー、でも解体できるお爺ちゃん今入院してっからなー」
「この子がやるっつってんべ。大丈夫だろ」
「できるの?」
「知識としては叩き込んでる」
「あんた無駄な知識詰め込むの好きね…」
無駄な知識とはなんだ。知識は宝だぞ。無駄なんて一つもない。
「じゃあ、とりあえず包丁もってくるから」
「わかった」
さて、始めようかね。
私はマスクをつける。隣では月乃と白露が見ていた。
「め、目が合ったぁ!」
「目が合って首が切れないようならまだまだ」
覚えた知識通り解体していく。
腹部を切り裂いて、内臓を取り出す。寄生虫がいたら食べるのやめておけと言うので細かく見ていても寄生虫らしきものは見えない。
私は今度皮をはぐことにした。包丁を変え、皮をはいでいく。
「手際ええし無駄がねえ…。おめえんとこの爺ちゃんと同じくらいうめえんではねえか? 前にやったことあるのか?」
「これが初めてのはずなんですけど…」
「初めてでこれたぁ将来有望だ…」
褒められてて嬉しい。
皮をはぎ、足等々を切り出し、解体が終わる。手には血が付き、血なまぐさい。
「綺麗にできたなぁ。半分夢野さんとこにやる」
「いつもありがとうございます」
「なぁに、鹿はここらでたっくさんとれんだ。大丈夫だ」
といってじゃあなといって軽トラで去っていった。
「…このシカ肉は今晩焼いて食べよう」
「初めて食べるよ鹿肉って」
「私も食べたことはないわね…」
「私は一度だけあるぞ」
白露はあるのね。
処刑(鹿)




