言っとくけど私魔王じゃないからね?
夜ごはんの時間になり、私が料理を作ることになっていた。
適当につくり、食卓に出す。
「改めて、私の彼氏の…」
「巽 明彦、ッス。さっきはさーせんしたっ!」
と、改めて頭を下げてきた。
「いいよいいよ。あんたの代わりにお姉ちゃんが仕返し受けてくれたから」
「…あんたよく虫を手づかみできるわね。気持ち悪くないの?」
そんなに。
クモでビビるような私でもないし、これといって苦手なものはない。運動ぐらいだろう。苦手なのは。運動と聞くと運動アレルギーが…。
激しい運動いらないのです。
「気持ち悪いのはお姉ちゃんの化粧…」
「あ゛?」
「そんなドスが聞いた声出さないでよ。冗談だから…」
タダの冗談なのにそんな睨まれても…。
私は大人しく自分で作った料理を食べることにした。うまっ、と自画自賛しつつ食べていると、不意に目にヘッドギアらしきものが見える。
「あれ、ヘッドギア?」
「あー、そうそう。私も始めたのよ。IUO。あんたが何て名前でやってるかわからないからフレンドになってないけど…」
「やってんだー。私はあいにく忘れてきちゃったからできないけど帰ったら探すよお姉ちゃん。何て名前?」
「…沖田総司」
「新撰組?」
法被でも着てるんだろうか。
に、似合わねー。たしかに沖田総司とかは近代ソーシャルゲームでは女体化されることもしばしば。女性がそのコスプレをすることもしばしば。でも似合わねー。沖って名前だから有名な沖田総司を持ってきただけだろうと。
「ついでにアッキもやってるよ。一緒にやってるんだよねー」
「リア充プレイヤーね」
「アッキが結構戦闘強くてさー。私はなんていうか生産職なんだよ」
「まあ、戦うのには向いてないからね…」
「あんたみたいに頭の回転も速くなけりゃ口も回りませんからねー」
お姉ちゃんが口をとがらせてそういった。
「ちなみにあんたは何て名前で?」
「パンドラ」
「…あの魔王軍の?」
「そうそう。あの魔王軍の。あれ私らがたてたやつだし」
「…うちの妹がそんな有名になっていたとは。まあ、魔王みたいな性格してるから考えてみればわかると思うけど」
「言っとくけど私魔王じゃないからね?」
というと、ショックを受けていたようだ。
「あんた以上にろくでもなくて悪魔みたいな人間がいるの!?」
「ひどくない?」
私は女神のような慈悲を兼ね備えた女神ですよ。悪魔扱いだなんてひどくない?
「よ、世の中広いのね…。うちの妹よりひどいやつがいたとは…」
「いや、私より優しい人いないから」
「あんたが優しいならこの世の全人類のほとんどが優しいわ」
とばっさり。
ひっでえ。




