強かな奴らに送る絶望のラプソディー ②
ばれてしまったからか、誤魔化すこともなくなっていた。
潮風が私たちに吹き付ける。潮の匂いが鼻をくすぐった。
「とりあえず、動機は?」
「おいおい、警察みたいなことを聞くんだなぁ。今更動機なんてどうでもいいくせに」
と、開き直ったような顔でにやけている。
片手には拳銃を持ち、そして片手には魔石がある。彼の眼は、諦めていない。乗り切るという強い意志を感じていた。
もっとも、見つかった程度であきらめるなら拳銃を持ったりしないだろう。
「俺としても、なぜ俺が怪しいと思われたのか知りたいがね」
「それはお前が異世界に行ったことがあるからだ」
「根拠は?」
「お前のセリフだ。ドラゴンの強さに言及していたところからだ。ここまでっていうことは前に弱いドラゴンに出会ったことがあるように見える。だからこそドラゴンの力を知らなかったんだ。知らないならここまでというのは普通でないはず」
「…鋭いね。ご名答。俺は異世界に行ったことがある。そうだなぁ、707で起きたボヤ騒動の時に知ったんだ」
ということだった。
「ボヤ騒動の時に偶然防火扉を開いたら穴があった。入ってみたら違う世界だったから驚いたよ。その日は一度帰って後日旅行に行くと言って休みをもらって異世界にいってたんだ。その時に、瀕死のドラゴンに会ってその肉を美味しく頂戴したら魔力が目覚めたんだ」
強い潮風が吹く。
「魔力が強いドラゴンだったからか俺にも結構魔力があってね。魔石でちょっと足りない分を補えばこうして穴を開けるんだよ。もっとも、塞げる人物がいるとは思わなかったがね」
福井警部は笑った。
「お前、警察の人間のくせにこういうことするんだな」
「警察の人間でも悪事を働くことだってあるさ。警察官だって一人の人間だよ? 悪事を働かないわけがない」
悪びれる様子も見えない。
彼自身悪いことをしてるとは思っていても悪くはないと思ってる人間なんだと思う。その矛盾差を抱えそれを見てみぬふりをしているだけかもしれないが。
だがしかし、破綻しているとは思う。
「都合が悪いものをみられたら殺すことだってある。それが君だよ」
「へぇ、私を殺すつもりなんだ」
「そりゃそうさ。そうでもなかったらここまでべらべら話すもんか」
と、拳銃をこちらに向ける。
そして、銃声が響き渡った。銃弾は私の頭を貫通し、奥の樹に当たる。彼がこちらに向けた銃口からは煙が出ており、彼は笑っていた。
だが、銃弾ごときで死ぬわけがない。
「私の事をよく知らないみたいだな」
「な、なぜ生きてる! たしかに脳みそにぶち当てたんだぞ!」
「知らなくていい事だっての!」
私は一気に距離を詰め、福井警部の体に触れる。
そして、凍結を発動。福井警部はだんだんと凍っていった。
「う、動けんっ…! な、なぜだっ…! お前には俺の世界のことなど関係ないだろう! なぜここまでしてこの世界を守るんだ!」
「理由はない」
私はとりあえず穴をふさぐ。
顔以外はすべて凍ってしまったらしく、喋るのがやっとのようだった。すると、彼はピクリとも動かなくなった。
その瞬間、凍っていたはずの彼の体が氷を突き破り動き出す。私の首根っこを掴んだ。
「コロシテヤル…」
と、魔力で私を掴んでるようで、私は身動きを取れていなかった。
彼の眼は虚ろであり、暴走しているようにも見える。あの真っ黒い空間…。あれはなんだ? ああいう目に見える真っ黒い空間なんてもんは見たことがない。
いや、あるにはあるが、あれは何ともなかった。もしかすると、中に何かやばいものがあったんだろうか…。
「コロスコロスコロスコロスゥゥゥ! オマエモ、ジンルイモ! シンジマエェ!」
苦しい…。呼吸ができない。
だが、なぜこうも暴走しているんだ。あの黒い空間に当てられたのだと考えてみると合点がいくがあれが何なのかはわからない。
すると、福井警部はどんどん大きくなり、私はがっしりと手に握られるぐらいに大きくなった。
「ブッコワシテヤルゥゥゥゥ!」
と、私を思い切りぶん投げた。
ちっ、結局ボス戦か。




