ドラゴン肉クッキング
妙来神社のゲートを塞ぎ、また戦った場所に戻ると報道陣がドラゴンの死体の目の前でカメラをとっていた。
ビャクロとワグマがインタビューを受けている。
「この程度肩慣らしぐらいだ。もうちょい手ごわい相手が欲しいところでした」
「馬鹿ッ、あんた人間やめてるんだからあんたの基準で話すな」
「だってこの程度余裕だろ」
それはあんただけ。
まぁ、私も勝ててたと思えば勝ててた気がするが。
「それで? この肉はどうするよ? 埋めるのか?」
「いや、食べますよ。魔王軍で」
「おいおい、これ食べれんの?」
「めっちゃ美味しいらしいです。それこそドラゴン肉のステーキとなると何もつけなくてもめっちゃくちゃうまいとか。ふるまいます?」
「食べたい! ねえ、作って!」
「いいですよ。このエコードラゴンは魔力がないドラゴンなんで普通の人が食べても魔力に目覚めないだろうし…」
エコードラゴンは声の振動で戦う。というか、ドラゴン自体魔力がないものがおおい。あるドラゴンにはあるが。
だからドラゴンは具体的に言うと魔物じゃないんだよな。
「ビャクロ―、この肉運べる?」
「持ってみないとわからん。スキルを加味すれば2トンまでは持てるぞ」
「おいおい人間やめてんな…。2トンもこの肉ねえよ…」
「わかった。どこに運ぶ?」
「そうだなぁ、調理できるところ…」
と、報道陣の人が声を上げる。
「ならばうちのスタジオはどうでしょうか? 広いしこの肉を出し入れしやすいと思います」
「お、ならそこ借りるか。普通の家だと細切れにしないといれれないだろうし出入口がでかいテレビ局なら」
「ただ、車にはつめないので歩いてきてもらっても…。一応近いので」
「わかった」
ビャクロは肉を掴み、そして肩にのせる。
「おお、いい重さだ」
「では案内しますのでついてきてください」
で、テレビ局のスタジオ内。
この後は料理番組の収録があったらしいのだが、騒動のせいで中止らしく、誰もいない状況だった。
スタジオ内にドラゴンの肉を運び入れ、私は包丁を持つ。
「貸す条件としてテレビとして映させてください」と言われたので了承した。
「んじゃ、まず鱗をはがさなくちゃな…。ビャクロ、頼んだ」
「任せろ!」
ビャクロは鱗を次々と引っぺがす。
鱗一枚一枚がとてもでかく、硬い。これだけでもフライパンとしては十分なほどに熱を通す。ドラゴンは捨てる部位がほとんどないのだ。
で、高値でも売れる。まあ、ドラゴン自体狩るのが難易度高いからあまり出回らないんだけど。
「コツとか教えていただけますかって…。ドラゴン自体あまりこの世界に来ないんだから言っても仕方ないと思うけど、めっちゃくちゃ硬いんで鱗は人の力じゃ取れないと思ってください。そうだなー、バールでこう、てこの原理でやったほうが早いかな? ああ、この鱗は熱も通すのでフライパンにしてもいいですよ。硬いですけど比較的加工はしやすいです。鉄みたいな使い方ができます」
と、話しているとビャクロが鱗をむしり終わったようだ。
数十枚の鱗が地面に散乱している。
「じゃ、まずブロックにしていくか…。つっても全部同じ部位だけど」
肉を切り分ける。
鱗は滅茶苦茶堅いがこの肉は柔らかい。筋は多少あるが包丁で切れないという硬さでもない。とりあえず肉を切り落とし、そしてステーキの大きさに切っていく。
とりあえず全部ステーキみたいな大きさにカットし終えたので、次は焼く。
「えっと、フライパンっと。えー、普通のステーキなら塩コショウとかするんですけど、塩コショウしなくても結構おいしいのでしません。ただそのまま焼くだけ…」
熱したフライパンのうえでステーキ肉を焼いていく。
ジュウウウと快感の肉の音が鳴る。ああ、いいにおいだ。肉が焼ける匂いがスタジオ内に漂っていく。カメラマンの人もよだれを垂らしてフライパンをとっていた。
そして片面に焼き目が付いたので、今度はひっくり返し焼き、両面とも焼き目がついたらそこで終わり。
「んじゃ、タレ作ってきますねー。っていっても普通のステーキと同じようにこのフライパンに残った油に醤油を少し焦がして…赤ワイン入れるだけですけどね」
出来上がったたれをステーキにかける。
「完成! ドラゴンステーキ! さ、日下部さん、空知さん。どぞ」
ふう。ただ焼くだけだから楽だったぜ。
ドラゴンステーキを恐る恐る口に運ぶ二人。二人の目が一気に見開かれる。
「…柔らけえ。脂もくどくねえし…。なんつーか、牛のステーキより好きだ…」
「超うまいんですけど! これご飯と合わせたら最強っしょ!」
スタッフの人がごくりと唾をのむ。
「じゃ、カメラを止めてくださいねー。カメラマンさんたちのも焼きますから」
「し、仕方ないわね。これにて終わり! さ、焼いて頂戴!」
と、厳しそうな女性スタッフの人がよだれを垂らしているので焼くことにした。
「坂田さん! 私も食べさせてもらってもよろしいでしょうか!」
と、若い女性スタッフがスタジオに入ってくる。片手には炊飯器をもって…。
「…その箱の中身を見てからよ」
「ふっふっふ。別番組で使うように炊いていた…アツアツの炊き立てご飯!」
「よしっ、参加しろ! 炊き立てご飯をくださいな!」
「やっぱ肉には白飯!」
「あ、ならその白飯ちょっといいですか?」
白飯をもらい、ご飯の上にタレをかけてないステーキを乗せて、レモンをかける。タレじゃなくてもレモンでも本当にいいのだ。
「はい、どうぞ。食べてないADさんで」
「お、俺がっすか! い、いただきます!」
ADさんは肉と一緒にご飯を食べる。
「レモンとご飯は合わないかと思ってたら違う! ドラゴンの脂がレモンによって中和されてもっと食べたくなる…!」
「ドラゴンの肉って滅茶苦茶旨いから焼くだけでも美味いし…。ミンチにしてハンバーグとかにしても美味い」
ドラゴンの肉で料理研究しようかな。




