悲鳴の音が聞こえない ③
劣勢だということがわかったドラゴンは翼をはためかせ逃げようとしていた。
空高く飛びあがる。ワグマもビャクロも高く飛べる術がない。
「レブル! 参りました! って、逃げてく!?」
「ちょうどいいところに来た! レブル、手ぇ貸せ!」
と、ビャクロがレブルの肩にのっかる。
「レブル! 自分の持てる最大力でジャンプしろ!」
「な、なにがなんだかわかりませんが…。とりあえず!」
レブルは天高く飛び上がった。そして、ビャクロはレブルを足蹴にして飛び上がる。そして、空中を蹴り、とうとうビャクロはドラゴンを飛び越してしまった。
ビャクロはドラゴンの背に降り立つ。
私がドラゴンならどうするか、それはもう簡単だろう。
ドラゴンは振り落とそうと精一杯暴れ始めた。
私は氷を喉元に放つ。
「暴れるんじゃないぞ」
「うっしゃ! ナイスだパンドラァ! そしてェ…」
ビャクロは力を込めている。
そして、ドラゴンの背中を思い切りぶん殴った。ドラゴンの皮膚がへこみ、ドラゴンは地上へ真っ逆さまに落ちてくる。その下には剣を構えたレブルが立っていた。
そして、レブルも飛び上がり、剣で切りつける。
「ジ・エンドです!」
ドラゴンは八等分に切断され、地面に落ちてきた。
「ナイス追撃だったぞ、レブル!」
「うち堕とし方もナイスでした! ビャクロ様!」
と、レブルとビャクロががしっと手を合わせている。
お互いがお互い人間離れしてるからあっちとは一緒になりたくないな。あれもう人間ができることじゃねえよってな。
大地の勇者たちも疲れからか、その場に座りこんでいた。
「なんでようやくこの世界を観光できるかと思ったらこんな惨劇なのよ…」
「…でもどっからドラゴンが来たかなんだよな。まだ穴はあるってことだろうけど」
それはどこにあるんだ?
妙来神社か? あそこは塞いでない気がするが。だが、妙来神社だとすると真反対の方向にあるからそれはそれでおかしい気もするが…。
とりあえず穴を探さないとな。
「渋谷の街がめちゃくちゃね…。これ復興に何年かかるのかしら」
「死者も相当出ただろうよ…。こんなファンタジックな大災害、なすすべもなくやられてんだから。とりあえず生きてる輩も探そうか」
「そうね。瓦礫に生き埋めになってる人もいるだろうし…」
私たちは近くの建物の瓦礫をどかし始める。
パソコンなどの機械の残骸がある。こりゃひでえな…。日本にとっては未曽有の大災害だろうに。こんなことは今までなかったことだろうしどう対処するのが正解かもわからなかったんだろう。
「私たちが離れていた一日でここまで壊されるか…。なんつーか、タイミング悪いな」
「ぱ、パンドラさん」
と、大地の勇者のリーダー、ヤストが声をかけてくる。
「ん?」
「助かった。俺らじゃ到底かなわなかった」
「なあに、それが普通だよ。あっちが人間離れしてるってだけで…」
私はビャクロたちを見る。
「あれをあなたたちと同じと考えないほうがいいわよ。そうね、たかだか拳銃一丁だけもって戦艦に戦いを挑むのと同じよ」
「もしくは、スズメがワシに勝負を挑むぐらいか」
大地の勇者たち総出でかかったとしてもビャクロとレブルには勝てないんじゃないかな。
「私は絶対勝てないし、パンドラは二人を同時に相手するのは無理よね?」
「そりゃね。一人ぐらいなら罠とか張り巡らせれば何とか」
「ええ…」
ビャクロとレブルの強さにどんびいていた。




