敵襲か!?
謁見の間まで逃げてきた。
「敵襲!?」
「いや、そうじゃないワグマ…」
戦闘の構えをしてきたビャクロとワグマを止める。
どういうことか説明しろと言う目を向けてきた。私は目をそらす。いや、私は悪くないんだけどね? カイハの発明品が偶然爆発しただけ、うん、そうだ。
「カイハの発明品が…どーんと」
「…要因は?」
「わ、私の魔法で…」
「ばか、偶然起きたことにすりゃいいんだよ」
すると、ワグマとビャクロが私をぶん殴る。魔法攻撃になる武器を使って。それは卑怯じゃない!? 私はダメージを受け、玉座の間に体がぶち当たり水が辺りに分散する。このまま床のシミにでもなっていたい。
「誤魔化すんじゃないわよ。どでかい爆発音で魔王城内が敵襲かと思ってピリピリしてんのよ…。今も魔王城の玄関ホールで武装して待ってるわ」
「悪かった! だが、いかんせん俺ら魔法っつーもんがわからなくてな! この得体の知れない感覚が何かわからなかったんだ!」
「そうです! その、出るのかなと思ったら本当に出ただけで…」
「ビャクロからもらった牛を食べさせたらそうなったんだ!」
と、ワグマがビャクロを見る。
「どういうこと?」
「い、いや、私はただ日課のトレーニングをしていたら偶然牛が出てきてな、それを退治して食べれそうだなって思ったから一応料理ができるカイハに渡したんだ。で、でも普通の牛だぞ?」
「馬鹿なの? ここは魔の森なのよ。普通の牛ならすぐに他の魔物に食べられるっての…」
「どう考えても普通じゃないでしょうが」
私は立ちあがり、ビャクロの頭にこつんと一発。
「なんであんたらそんな…。ビャクロも遠因の一つじゃない…」
「…すまん」
「とりあえずみんなの誤解を解かないと。今にも戦いそうだし…」
「あんたらのせいで信用どん底よ? 組織っていうのは不満を与えちゃならないってのに…」
ワグマは謁見の間から出ていく。
尻拭いしてくれるようだった。
「あ、あの人誰ですか!? めっちゃ怖かった!」
「あ、ああ。なんていうか、顔が見えないいかつい鎧を着ていたな…」
そっか。ワグマは一応兜もつけてるっていう形なんだっけ? 私たちには頭を視えるように設定しているらしいが…。
どういう兜を着てるんだろう。あのごつい鎧は結構見たことあるけど…。
「魔王様だよ。ほら、ゲームとかでよくいる」
「魔王様!? そんな偉い奴なのか!?」
「さ、逆らったら殺される…?」
「いやいや、下手に馬鹿にしたりしなきゃ殺されないって」
「ワグマは優しいからな」
「あ、あんたらはじゃあ、か、幹部?」
「ああ。私がビャクロだ。最高幹部とは言っているがそんな気にせんでいいぞ。私は別に戦えればどこでもいい」
「改めて最高幹部のパンドラねー。私もそんな地位はどうでもいいんだけどワグマと一緒でいたらいいんだよねー」
二人は大変怖がっているようだ。
日本のゲームだとたしかに魔王は勇者に討伐される立ち位置だし、いわば悪の立ち位置だ。こうなるのも仕方ない面もあるかもしれない。
そろそろ善良な魔王も出していいと思うんだ。
「とりあえず二人はこれからどうするかね。いつあっちの世界に戻る?」
「も、戻れるの?」
「来た道を使えばたぶん行けるはず」
あの通路を隠していたのか。学園長は。
きっと財宝はそれに気づかせないためのフェイクなのかもしれないな。とまあ、そんな考えはいろいろあるが、この二人にはまずこの世界を見てってもらおうか。




