工事現場での噂
走って去ったのはいいんだけれど、追ってきている。
私の運動性能じゃ巻くことは不可能かなと思いながらも、工事現場の横を通るとレブルが角材十個を軽々と持ち上げて移動していた。
「ぶふっ!」
「あ! 師匠! どうしたんですか?」
「い、いやなんでも…。レブルそんな力あるの?」
「鉄骨十個くらいなら軽々持ち運べるほどには!」
ほんとバケモンだよこいつ…。力も異次元だ。さすがにビャクロは鉄骨十個を軽々ではないし、そもそも人間じゃもてない。
ほら、工事現場の監督さんも唖然として見てるじゃんかよ…。すげえ目立ってる。
「レブル、あんたそんなに目立つな」
「はい!」
と、九個をその場に置いて、一個ずつ運ぶようにしたのだった。
レブルをあいつらが見ていない。あの物陰から見ているだけなので誰かと話しているぐらいしかわからないだろう。
バレたからどうだっていうわけじゃないけれど。
「あ、そうだ師匠、監督から面白い話が聞けたんですけど」
「面白い話?」
「近頃魔物だけじゃなくて神隠し騒動もあるんですって。それが必ず決まった場所に行くとそうなるらしいんです」
「決まった場所?」
「監督も人づてで聞いた話だからどこかはわからないとはいってました」
その決まった場所が怪しいな。
神隠し、神隠しねぇ。それはきっと異世界に連れていかれてるんじゃないだろうか。もしかしたら異世界に行くためのゲートがそこにあるのか?そのゲートに触れてしまうと異世界に送られてしまう…。そういうことだろうな。
問題はその場所がどこか、だよな。
「こちらからいけるということはあちらからも来れるということだよな。魔物はそっから出てきてるんじゃないか?」
「たぶんそうだと思います」
「となると、そのゲートを何とかして閉じないといけないわけだ。まずはそのゲートを見つけることが大事、と」
きっと創造神はゲートが開いてることに気づいたけど干渉ができない。だからこそ力を与えてゲートをどうにかしてもらおうという魂胆だろう。
まあそれはしょうがないよね。とはいっても、どういう理由でゲートが開いたんだろう。私たちのせい…ではない。私たちが来る前には魔物騒動があった。
「レブル、そういう噂を集めておいて。私がつなぎ合わせてみるから」
「合点!」
「口調がもう工事現場の人だよ…」
影響されるの早いな…。
ま、しょうがない。そういうことならあの集団を使わせてもらうことにしよう。ゲートを探すのに一人じゃきついからな。
私は横の曲がり角の方に目をやるとびくっとして七人が隠れる。
「バレてるからでてきなよ」
「…なぜ完璧な尾行作戦が」
「気配でバレバレだっての。そもそも、異界から来た私をほっとけないだろうなーと思ってはいたからどうせ尾行してくるとは思ってたよ」
私はその集団に近づいていく。




