代々木公園の魔物騒ぎ ①
榊の家は普通の一軒家だった。
玄関から入り、私は靴を脱いだのだが、レブルはそのまま…。
「れ、レブルさん! 靴を脱いで!」
「靴を…? あ、はい!」
あっちの世界じゃ靴は風呂とか寝る時ぐらいしか脱がないしレブルの場合はベッドを与えても床で座って寝る人だからな…。
いつ寝込みを襲われても大丈夫なように剣を抱いて寝ている。
「そういやレブル、鎧なんていつ買った?」
「えっと、暇だなってニホン国をぶらついてたら目に入りまして…。なんか私のセンスにピンと来たんです! まあ、普通の鉄の鎧ですし、なくてもいいというか、ないほうがもうちょっと早く動けるんですけど…」
「じゃあ脱ぎなよ…」
というので、本当に鎧を脱いだのだった。
勢いよく地面に落としたものだから鎧があたって床が傷ついていた。榊の顔がちょっと青くなる。そりゃ自分ち傷つけられたからなぁ…。今回ばかりはこちらが常識なかった。
「レブル、床傷ついちゃったじゃん…」
「あっ! す、すいません! 今直します!」
「いやいや、直せないから…」
「ど、どうしましょう! 弁償ですよね!? でも私たちお金が…!」
「……榊、許して?」
私は笑顔でそういうと、榊はひっという悲鳴を上げて頷いたのだった。
「とりあえずこちらに…」
案内されたのはリビング。
私はソファに座り、テレビをつけると先ほどのトラック事故がニュースで早速やっていた。ニュースキャスターも本当か?っていうような顔をしている。
『つい先ほど…渋谷のスクランブル交差点でトラックが通行人めがけてつっこんでいくという事件があったのですが…つっこまれた通行人が生身の体でトラックを止めたよう、です…』
「さっきのことだねえ」
「み、みなさんできないのですか?」
「やれたら転生してないだろ…」
レブル、自分の普通を他者に押し付けるな。お前は普通じゃない。
とはいえ、先ほどはちょっと目立ちすぎたな。異世界からきた、と言うのは信じられないかもしれないが…。まあ、とりあえず秘密にしておこう。
『続いてのニュースです。謎の生き物が公園内で暴れており、封鎖されている状態です。戦車を動員するも、戦車が壊されるという…』
「……魔物?」
「魔物ですね。場所は…」
「場所はたしか代々木公園あたりだったような…」
「向かいましょう!私たちじゃないと無理ですよ師匠!」
「そ、そうだね…」
というので代々木公園に向かうことになるが、名前だけしか知らないんだよな。歩いたことないから。
榊が案内してくれたりしないだろうか? 榊を見ると、何もわかってないような顔をしていた。
「榊、代々木公園まで案内して」
「ええ!? 今警察が誰も入らないようにしてますよ!?」
「そう言ってる場合じゃないでしょ。いつまでたっても魔物が死なないよ」
「ううう、でもその剣とかバレたらやばいですよ!」
「剣なら私の魔力で具現化してるだけなので…こんなふうに消せますよ?」
「「消せるんだ!?」」
それは私も初耳。
そういえばレブルのその剣は警察に見られたら銃刀法違反でやばいことになるよなぁと思いつつ、警察が囲っているとなるとどこかから中に入っていかないといけないわけだが。
抜け道…抜け道ねぇ。
ま、行ってみて考えよう。




