日本へ行く方法
王城に通してもらい、書庫に入っていく。
私は一冊の本を手にした。初代国王の手記。分厚い本を開くと、そこには日本語で文字がつづられている。
『私は突然、この世界に転移していた。
魔の森と呼ばれる祭壇に眠るように倒れていたようだ。オールランド王国の兵士が私を発見し助けてくれた。この世界の人は優しかった。
だが、壁があった。言語の壁。私は、わからないながらも身振り手振りで伝えた。でも、わかりづらかったので日本語を教えてみた。すると、翌年には公用語として広まっていったのだった。
私の快進撃は泊まらなかった。
この世界には魔王が存在するらしい。魔王は邪知暴虐を尽くしているという噂を聞いた。魔王が魔物を国にけしかけて困らせている、と。その魔王を討伐してほしいとエヴァン帝国、オールランド王国のそれぞれの王から頼まれた。私にはとても強い能力があったからだ。
そして、私は一年後に魔王を討伐した。
苦しく勝利した。だが、私には魔王が悪い奴だとは思えなかった。倒した。後味が悪い。私は魔王にあこがれを持ったのかもしれない。
私は敵…いや、友の国をもらいうけることにした。
国名はどうしよう、日本にはまだ未練がある。ニホンって名前にしようかな。出身国は日本ですと素直に言えるように。
…どうにかして戻れないだろうか。私は王として政務をこなしつつそれを調べることにしよう』
と、書かれている。
そして、ペラペラとめくっていき、最後のほうに新しい情報があった。
『私はもう歳だ。日本には戻ることはできなかった。あともう少しだった。戻り方が分かったがもう魔物がはびこる森を抜けてあの祭壇に行くことは不可能だろう。
だから、後世にまた、私のように転移してきた人のためにやり方を残す。
まずは月だ。
この世界の種族では魔力が足りない。だから月の魔力を借りるのだ。満月の時、月の魔力は最高潮になるだろう。この世界は不思議なことに満月の時だけは雲が一つもない。
そして次は力だ。
勇者に選ばれるような人であればいい。日本から来た人は全員それを満たしている…。稀にこの世界の人も満たすことがある。
最後に言葉だ。
満月の力を借りるため、呪文を唱えるのだ。呪文を記す。
”銀の月は我が力となり、世界の扉を開かせよ”
これで開くはずだろう。
私は戻ることはかなわなかったが、他の人は戻れるように…。そう願っている』
と、これで終わっていた。
だがしかし、あらかた情報はつかめたから良しとしよう。祭壇の場所は私は一度いっている。あの真っ白いパズルを解いたところだ。
森の中に祭壇があるというのが不思議だったが…。あそこがカギとなっていたとは。
「レブル、もう月は昇ってるか? どんな月だ?」
「えっと、丸っこい…。満月です」
「なんてタイミングがいいんだ! さっそく別の世界へ行こうか!」
私はレブルの手を引き、王城から出てモルの背にまたがる。
そして、その祭壇に向けて私たちは向かうのだった。




