馬車の中でこわーい話
馬車内はとても暗くしていた。
「これは私が昔体験した話です。
とある貴族の家にはとある高価な壺がありました。壺の中身はいつも空っぽ。もともとは有名な陶芸家が作った壺で骨董品としての価値はあるものの、なぜか買い取ってくれないという曰く付きの壺でした。
その壺をある日メイドが落としてしまったそうな。屋敷内に響き渡るほどの大きな音を立てて。その音を聞きつけた主人と他のメイド仲間は奇妙なものを目にしました。
壺が、ないのです。割れた壺の破片一つスラ見当たらあず、落としてしまって気絶したメイドにも刺さってはおりませんでした。ですが、そのメイドは既に干からびて死んでしまっていたんです。
血が抜かれ、ミイラとなってしまったメイドを不気味に思ったのか、その屋敷の主人はもう二度と壺を飾ることはしなくなりました。壺を飾ると何か起きそうで怖かったのです。
ですが、屋敷の主人が別荘に行った際、飾った記憶のない壺がありました。その壺を見るや否や主人は恐怖がまた湧いてきて…。ひたすら逃げていました。玄関口に飾られたその壺を避けて窓から出入りをしていたんです。
が、ある日。執事の一人が壺を抱えて。
『旦那様、この壺落としてしまって傷がついてしまいました』
と。落としてしまって何ともないのか? 割れていないのか? と、主人が執事に近寄ると、その瞬間執事は狂ったように壺を床にたたきつけ、そして主人の首を絞めました。
そして、執事はこういいました。
『お前もあのメイドみたいに殺してやる!』
と。なぜメイドを殺してしまったのでしょうか。なぜ割れたはずの壺があるのでしょうか。真相は闇の中です…」
私はろうそくを吹き消した。
「ひ、ひいいいいい!?」
「お姉ちゃん怖いよー!」
と、他の乗客が暇そうだったので適当に作り上げた怪談話を聞かせたのだが、みんなちょっと怖がっている。
すると、とあるおじいさんが壺を落とした。その瞬間、乗客全員びくついていた。
「す、すまないすまない…。ちょっと怖くての…。この壺は骨董品の偽物じゃから気にせんでもええよ」
「どうでした? 気紛れました?」
「まぎれるか! 怖えだろ! もう貴族の屋敷行きたくねえよ…」
と、男性冒険者がちょっと怖がっていた。
「作り話ですよ。ほんとにはないですって。いや、ほんとにあった怖い話もいくつかありますけどどうします? たとえばトイレで首を絞められた、とか、ニホン国軍務学校の七不思議とかとある国の学校のスケルトンとか」
「もういい! やめてくれ!」
と、子どもがみんなビビってるし、大人も恐怖している。
「でも師匠幽霊と友達ですよね」
「……はあ?」
「友達っつーか、仲間? いや、あいつは一応れっきとしたモンスターだぞ。死霊系のモンスターなだけであって」
レブルが言っているのはきっと死霊姫のアップルの事だろう。
それをいうならデュラハンのアガルギルドも一応はお化けだし。たしか一部の国ではデュラハンは妖精の一部とか言ってるけど、アガルギルドはどうにもアンデッドなんだよな。
あとリッチーのエディットとかもアンデッドだし。
「……お前ゴーストバスターズなのか?」
「スタンド使いです」
「すた…?」
「ごめん、これは忘れて」
そういえばここゲームの世界だもんな。いや、現実でもスタンド使えないけど。
「でも、お嬢ちゃんお化け怖くないんならあるクエストやらねーか?」
「クエスト?」
「怖すぎて誰も近づかねーんだよ。とある商会の建物に行ってもらうんだけどよ」
「あー、それは今の用事が終わったら行くよ。で、どういうクエスト?」
「えっとな、数年前にガルグー男爵領の森の中で商会があったんだが、その商会は潰れてその建物も廃屋となった…んだが、なんつーか、でるらしいんだよ。その幽霊が強い、かつ怖いから行きたくねーんだと。ニホン国の冒険者ギルドにいけばあるからそれを消化してくれねーか? 誰も行かねーから困ってるんだ」
「あー、いいっすよ。幽霊退治ね」
出る、かぁ。
じゃあレブルに肝試し…。いや、レブルなら簡単に勝てるからダメかな?
「話してるところ悪いんですがそろそろオールランド王国王都に到着しますよー」
というので、降りる準備をすることになった。




