下校間際
月乃と白露は校門前で待っていた。
「クラスが違うと不便ねぇ」
そう月乃がぼやく。
「ん? パン子、後ろから誰か見ているぞ」
「あれは転校……ああ、伊東じゃない」
「知ってんの?」
「噂ぐらいよ」
と、月乃が呆れたように言う。
噂ぐらいでも知ってるってことは家は相当裕福だと見た。ちょっとだけ付き合いがあるって程度の家だろうか。
「あの伊東家ねぇ。どうも勉強が大事だと思ってるみたいで勉強ができないと落ちこぼれ扱いになるのよ。で、今年落ちこぼれが転校してくるーとか聞いてはいたけどあいつのことね」
「ふぅん」
毒親、ということか。
勉強は確かに大事。だが、勉強がすべてじゃない。私の場合は勉強することが大好きだからいつでもできるが白露、月乃はそうじゃない。
というか、親がやれというと嫌になるのだ。
「さっき友達になれっていわれて断ったのまずかったかな」
「あんた断ったの?」
「いや、かかわるとろくなことに…」
というと、伊東がこちらに近づいてきていた。
「夢野、俺は諦めない、ぞ」
「……そんなに友達になりたいの?」
「あ、ああ。友達がいないのは、つらい」
そういうならなぜ俺より頭悪い奴と友達にならないとか言うのだろうか。いや、たぶん親が言うのだろう。親にばれてしまうともっと扱いがひどくなる……とかだろうか。
だからこそつるむ相手を選ぶ必要がある、ということかな? それもちょっと呆れるが。月乃を見てみろ。月乃こそつるむ相手を選べばいいのに私というジョーカーと付き合ってんだぞ。
「パン子、友達になってあげなさいよ」
「といわれても。俺より頭悪い奴と付き合わないとかいうんだぞ? 関わると面倒だろ」
「……親にばれたら嫌だから」
「だろうね。でも、自分の意思で友達を作れないというのは嫌でしょ。なんでそこまで親のいうことに必死になるんだか」
「……認められたい」
「はいはい、よくある承認欲求ってやつね」
そういうのは聞き飽きた。
なぜ認められたいのか。いや、なぜ自分で自分を認めないのか。なぜ認めることを他人にゆだねるのか。
「パン子卵に衣着せない言い方だな」
「歯に衣着せぬよ。とんかつでも作るつもり?」
「……言い間違えただけだ」
なぜそこで二人で漫才をしてるのか。
「認められたいだけで友達になりたいなら私は絶対に嫌だからね。あんたが認められたいがために付き合う道理はないっての。さ、帰るよ」
私は白露と月乃を連れて家に帰ることにした。
彼も気の毒だろうとは思うよ。でも、同情することじゃない。彼だって悪いのだ。もう高校生だ。やりようはいくらでもある。
あいつもあいつで苦労はしてるなとは思うけど。




