イベント再開
朝にでかい段ボールとベッドを受け取り、午後にまたIUO制作会社に来ていた。
私たちはまた装置を使いログインする。
「さてと、やりますかね」
久しぶりのアバターの感覚。
私はとりあえず腕が鈍ってないかビャクロと戦って確認することにした。ビャクロも乗り気なようで、ワグマの掛け声とともに戦いがスタートする。
ビャクロはまず、思い切り距離を詰めてくる。
「ビャクロはどう動くかわかんないから嫌なんだけど…」
私はビャクロの攻撃を躱す。
ビャクロは不規則な動きなので先読みがしづらいというのもある。というか、いつも攻撃手段を変えてくるのだ。単調な攻撃じゃなく、本当に複雑。
癖、というものがなさすぎる。私が観察しても癖がないのはわかっていた。
ただ統計的に繰り出すことが多いのは把握している。
「右ストレート!」
「ちい」
右ストレートが来ることを予測して大正解。
ビャクロは攻撃するときは右手から開始することが多い。ほとんど利き手である右手からだ。ただストレート、アッパーということもあるし、もしかしたらキックという可能性もなくはなかった。
こいつ手数があるくせに攻撃力滅茶苦茶高いからな! 厄介この上ない。
「パンドラには行動はさせん!」
と、次々と攻撃を繰り出してくる。
手数で攻めて考える余裕をなくすつもりだろう。正確には攻撃する隙を与えない、ということだ。私の防御で言えば本当に一撃当たるだけでも結構瀕死…最悪死ぬんじゃないかなっていうぐらいにはビャクロの攻撃力と私の防御力はかけ離れている。いや、私が低すぎるだけなんだけど……。普段は物理無効っていうものがあるぐらいだし…。
「さすがにパンドラは避けるので精いっぱいってところね」
緊張の糸が切れない。
ギリギリなところで躱し続けている。距離をとりたいが間合いを詰めてくるせいで後ろに下がれない。
しかも、腕を集中的に狙ってくるがために腕を上げて狙いをつけづらい。
「っと、そこまでにしなさい。本当に当たったら死ぬんだからパンドラは…」
「そうだな」
と、攻撃をやめる。
ちょ、ちょっと疲れた。反撃する暇がない。一番の鬼門はやっぱビャクロなんだよな。このイベントの。
私はこういう肉弾戦は不得手だしビャクロだからこそ当たらずに躱せた…。いや、たぶん手を抜いてたんだろうけど。
私は頭脳プレイなんだよ……。罠とか仕掛けたほうがいいんだっての。
「やっぱ私たちに勝ててもビャクロは突破できない感じかしら」
「ビャクロはマジでバケモンだからなぁ…」
ワグマと私はちょっとため息をついた。
戦闘スキルでいえば才能も含めてビャクロが一番なのだ。ビャクロが弱体化しないと多分勝てない、んじゃないかな。そう簡単にデバフかかるビャクロさんじゃないと思うけど。




