勉強しなさい
現実でも私は頭を抱えていた。
「パン子。ここはなんでこうなるんだ?」
「……少しは自力で考えることは?」
「無理なことはパン子知っているだろう?」
白露と二人でお勉強会をしていた。来週中間テストがあるらしく赤点取るのはまずいということで中学からずっとテスト前は私が白露に教えていた。
ちなみに今日は月乃は父の会社のパーティにでるからといって帰りました。
「ここはこの関数を……」
「定規を使え!」
「符号をちゃんと見ろ!」
白露は勘が鋭いし人を見る目考察力はある。が、座学が弱い。ずっと柔道漬けだったからか机に向かうことは基本学校だけ。
ちゃんと勉強させなさいよ。
「白露もさ……期末ぐらいは自分の手だけで」
「頼れるものに頼って何が悪いんだ?」
「悪くはないけど……」
放課後すぐに帰りたい人間だからな。
ちなみに白露は柔道部あったらしいけど座学がやばいので勉強してきますといって抜けたらしい。
「中間テストなんて消え失せればいい」
「そう毒を吐かない」
白露はスポーツ特待生として入学したけれどだからといって座学を疎かにしていいわけじゃない。座学があまりにもひどかったらスポーツ特待生っていうことを無くすというらしい。
中学の時は教えても赤点ぎりぎりだったのが心配の種だ。
「そもそも、赤点取ったらゲームしばらく禁止と言われてるんだっけ?」
「ああ。父からな」
このままだとゲーム禁止になる未来が見える。
「それにしてもどうだ?ゲームは」
「楽しいぞ。白露は?」
「意外と楽しい。だが、柔道のほうがやっぱ楽しいな」
柔道馬鹿め……。
だけどまぁ、楽しいと思えるんならまだいい方か。白露は柔道以外まるっきり興味ないし、そもそも、白露が一番ドライだと思う。
こうして話しているのも結構大変だったりする。いや、過程がね?
白露は人見知りはしないが、あまり人と話さない。むしろ一人でいようとするタイプで、最初の頃は近づくななんて言われていた。小学校三年生の時だ。
遊ぼうよと誘っても柔道あるからと断られ、柔道教えてと話すきっかけを作ろうとしても「いらん。教える時間がもったいない」と柔道を第一にして考える節がある。
なにかに打ち込むというのはいいことかもしれないけどそれも限度というものがある。
「柔道に専念しすぎた結果がこれだもんなぁ」
「うぐっ……。仕方ないだろう。柔道は楽しいんだから」
「だからって勉学を疎かにしていい理由にはならないでしょ。勉強は日々積み重ねだぞ? 城が一日で建つと思うか?」
「異世界ならば建つだろう」
「……あの魔王城はおいておいて。現実で!」
あれは例外。
あれは例外なんだ……。
「まぁ、建つわけないだろう……」
「それと同じ。勉強は積み重ねなんだぞ」
「うぐっ……」
白露は机に突っ伏した。
「もうやめたい。投げたい。組みたい。払いたい」
「柔道の禁断症状だすなよ……。柔道ホリックかよ」
「テスト期間だってことで部活で出来ないわ、家帰っても父に柔道やる暇あるなら勉強しろと言われるし最近出来ていないんだよ」
「柔道やったら勉強したこと忘れるでしょ」
「うぐっ……」
柔道バカだから柔道することによりハイになり、そのまま記憶すら一本背負いで投げ飛ばしてしまうのがこいつだ。
付け焼き刃は所詮付け焼き刃なんだよな。
「私は柔道がしたいんだよ……! 勉強なんて将来使わんだろう! 困ることはない! やる必要はないだろう!」
「現に今困ってるのにそれをいうか?」
「うぐぅ!」
そう駄々こねてないで勉強しなさい。




