電車内にて
ゲームのイベントの再開は12日を予定しているらしい。
というのも、あのプログラム改ざん等々があったせいでセキュリティプログラムを作り直す、のだとか。
で、ひとまず家に帰されるのだった。
私は家に一度帰り、街に出る。久しぶりに元の家に戻ることにした。予想外に空いてしまったから暇だし涼介にでも会いにいってやろうと思いながらも。
で、電車で席に座っていた。
「人多いな…」
少し嫌気がさしていたころ、お腹を膨らませた女の人が入ってきた。
席は全員座ってるし、誰も譲ろうとはしなさそうだな……。つっても、私の駅もそろそろだし譲っても良さそうなんだけど狙ってる輩がいる。
さて、どう譲るものか……。
すると、私と目が合ったので、ちょいちょいと手招く。
「席いいですよ。取られないうちに座ってくださいな」
「あ、ありがとうございます」
妊婦座らせられた。
すると、一人の男性が私に近づいてくる。
「おい! 俺に座らせろや!」
「……ほへ?」
いきなり絡まれるとは思わなかった。
しわっしわのスーツを着ている中年のおっさん。疲れてそうな顔をしてるが…。
「いやいや、なぜ? 妊婦優先でしょ」
「俺が座ろうと思ってたんだよ! いっちょ前に譲りやがって! あんたみたいなやつを偽善だって…!」
「やらない善よりやる偽善ってよく言うでしょ? それに、おじさんが座りたそうなのは見え見えだったしそういうやつには座らせたくないなーって」
まあ、こういうやつもたまに出くわす。出くわす率はなぜか私が一番高い。
「それに、常識的な行動をしただけですよ。妊婦に席を譲るのは当然でしょ」
「うるせえ! 俺は社会の為に必死こいて働いてんだ!」
「だから? だからなんですか? 必死こいて働いてるのはあなただけなんですか? あなた一人が社会貢献してるとでも思ってるんですか?」
ま、こういうのは感情論でしか動かないので論破はしやすい。
「妊婦さんすいませんね。気にしないで座ってていいですから」
居づらそうにしていた妊婦さんに声をかける。
「スーツを着ているのはあなただけですか? 働いてるのはあなた一人なんですか? 違いますよね? 働きに行く人、周りだってスーツの人だらけでしょ? ならそういう人たちにも席を譲らないとダメじゃないですかー」
「……ちっ」
と、男は分が悪いと思ったのか去っていく。高校生のような私だからなめてかかったんだろう。脅せばきっと何とかなると思ったんだろうか。
いや、月乃が言うには私は人畜無害そうな顔をしてるっていうし。だから絡んでくるのか? ま、絡んできてもやり返すだけだけど。
『次はー、○○ー、○○ー』
と、私が降りる駅だった。
「妊婦さん、あいつが来ても絶対譲らないほうがいいですよ。あなたのほうが大事なんですから。じゃ」
私はそういうと妊婦さんはありがとうございますといっていた。
感謝されるのは悪くない。ふっ。夢野 眠はクールに去るぜ…。




