回復してあげる優しいボス
なかなか次の挑戦者が来ないので私は弓矢をくるくる回していた。
「パン子、あの西部劇で見るような銃をくるくる回してしまうっていうのできるのかしら?」
「ん? ああ、できるよ」
私は魔道銃を取り出しくるくる回してしまう。
「…今思ったけどパンドラって左利きなの?」
「ん?」
ああ、そういや言ってないのか。
私はさっき左手でくるくる回してしまった。そのせいで左利きだと思ってるし、何気に普段よく使ってるのは左の方が多い気がする。
だが違うんだな。
「ああ、知らなかった? 私どっちも使えるよ。両利きってやつ」
「…まじで?」
「親が死ぬまでは右利きだったんだけどね、勉強しだしてからなんていうか勉強ホリックになってさ、右の手で書き続けたら右手が疲れるわけじゃん? じゃあ疲れてない左手で書こうとして左手でも書いてたらいつのまにか両利きになったんだよ」
「あんたが勉強中毒だったっていうのは知ってるけど…」
一応左手で絵をかいたりもできたりするし箸も持てる。だから左手で精密な射撃をしろといわれてもできるし右でもできる。
「ワグマとビャクロは右利きでしょ?」
「そうよ。というか、大体がそうじゃないかしら。左利きの人少ないわよ」
「母さんが左利きだな。私は右利きだが」
と、利き手の談義で盛り上がっていると足音が聞こえた。
どうやら挑戦者が来たみたいだった。私は銃を構える。来た人は重装備のプレイヤーたち。でかい鎧を着ている人もいれば身軽な格好でナイフを構えてる人もいる。職業で言うと戦士、盗賊、僧侶、魔法使いという振り分け。前衛と後衛がきちんとわかれているいいパーティだな。
「…今の状態で勝てる? 道中でめっちゃ削られてるんだけど」
「…無理だろうな。体力差が」
というので、ビャクロがこちらを見てくる。
回復してやれということか。ま、相手も回復してくる魔力もなかったんだろう。全員が息切れしているようにも見える。
私はとりあえずポーションを投げてやった。
「受け取れ。対等に戦おう」
「ったく、別に戦いに情けはいらないと思うけどな…」
「正々堂々だ。それに、あそこまで体力を削ってでも私たちと戦いたいという心意気が私は気に入った」
とかいって回復するアイテム出してるの私なんですけど?
こういうアイテム買ってないから少ないんだよ。っていうか、ボスが回復してくれるっていうゲームほとんどないからな。知ってるので言えばF〇4にいるゴルベ〇ザ四天王のルビカ〇テくらいしかしらない。
それ以外はその直前に回復スポットがあったり、そのままの体力で挑んだりとか。
「全回復したか?」
というと、相手は頷く。
「んじゃ、とっとと始めよう。ああ、もちろん卑怯な手も姑息な手も全力で使ってきていいからね?」
「……じゃ、立ててきた作戦通りに!」
と、私たちとプレイヤーの交戦が始まった。




