手慣れた勝利
ワグマたちがどういうような防衛をしているかはわからないが…。
とりあえず私は負けていない。あまり本気を出してはいないが、それでもゲームに勝ててしまう。考えたら勝てるようにはしているのに……。
と、その時アナウンスが聞こえる。
《シャドウ魔王軍が守っているダンジョンが陥落しました。陥落させたプレイヤーが魔王の遺産である槍を獲得しました》
というアナウンスだ。開幕二日目にしてどこか陥落したらしい。運営の話によると遺産は全部で七つ。片手剣、大剣、斧、弓、槍、爪、杖の七つ。どれもが強力だが特に強力なのは大剣、弓、そして槍の三つだということ。
多分一番やばい奴を私たちが守っているのだろう。
私はちょっと興味本位で宝箱を開けてみると、中には弓が入っていた。どうやら私は弓を死守しろと。効果はわからないがとりあえずものすごいものなんだろう。そう簡単に上げてたまるかっての。
私たちはイベントに参加してないしもらえないんだからさ。参加する側だったらこの弓欲しいけど……。
「あ、ぱ、パン子さん?」
「ん? あ、甲地。久しぶり」
久しぶりっていうほどでもないけれど。
とりあえず私は席につかせる。まさか挑戦者が甲地だとは思わなかったが、まあいいか。私はとりあえずゲームを選ばせると甲地が…いや、タケミカヅチが選んだのはなんとテレビゲームだ。それも私がちょっと苦手とするカーレース。
こいつ、私の得手不得手を理解してきてるのか? いや、単なる偶然だろう。私はカーレースをタケミカヅチの前でやったことはない。
すると、私たちの目の前にコントローラーが出てくる。私たちはそのコントローラーを手にしてテレビゲームを始めるのだった。
キャラを適当に選び、そして、レースがスタートする。
私はボタンを押して華麗にスタートを決めたが、タケミカヅチがすぐに追いつき私にわざとぶつかってきて崖外へと押し出されてしまった。
思わず私は素で驚いた。
「はあ!?」
「あはは…」
「イケメンのくせに妨害してくるなんて!」
性格わっる!
私はまたすぐに追い抜こうとするも、相手が蛇行運転するせいで抜かしづらく、そして、また障害物に当たってタイムロスをする。相手はまた先へと進んでいった。
待ってくれ、これはやばい。こいつ手慣れてる! もしかしてこいつカーレースが得意ゲームなのか!? それなら不利すぎる!
確かこのゲームはショートカットできるところがっ…! って、こいつも使ってやがる!
まず一周目で大差をつけられている。
勝てる未来が見えない。これはまじでやばいかも。ちょっと舐めてた。カーレースは他のゲームに比べて苦手な面がある。どうしても体もちょっと一緒に動かしてしまう。
それは知らなくとも、でも、こいつ妙に慣れてやがる!
「くっ、負ける! 今まで負けたことがないのに!」
「カーレースは得意なんだ。昔の友人が好きで滅茶苦茶付き合わされたから覚えたんだ」
「ずっりい!」
「選ばせたのはそっちだよ」
私はあらゆるテクニックを使って逆転を試みるも、一向に差は縮まらず、そして最終ラップを迎え、ついには負けてしまった。
すると、私の体がどんどんとなくなっていく。
「あああああ! 悔しいいいいいいい!!!」
私はそう言い残して消えていった。
《シャドウ魔王軍最高幹部、パンドラが守っているダンジョンが陥落しました。陥落させたプレイヤーが魔王の遺産である弓を獲得しました》
負けちゃった…




