運命の奴隷
さっきの同年代っぽい少年…。なかなか将棋の腕が強かったな。
っていうか震えを感じていたが何だろう。私は特に何もしてない、はず。いや、ちょっとだけ緊張してたかもしれない。もし負けた時のセリフとか考えて言うことあるかな?と思いながらうってたから……。もしかしたら笑顔がぎこちなかったかもしれない。
仕事とはいえこっから動けないのは辛いなぁ。まあ、外に出ても全体的に黒いしなんか瘴気っぽいものでてるしどちらにせよ不気味なんだけど…。
「…あれ、パン子じゃん」
「…どなた?」
「この顔…。黒くて少々分かりにくいけどパン子だ」
「だから誰だつってんの」
「俺だよ俺」
だから誰だよ。
「新手の詐欺か? っていうか声で判別できるか。兜はずせ」
相手は兜をかぶっとるからよくわからない。
「ん、なんかちょっと寒気がしたんだけど」
「気のせいだ」
相手は兜を外すとそこには同じクラスの高山くんがいた。高山、高山なぁ。一番馬鹿をしてるイメージだ。こいつは完全に変態という扱いで、女子からの好感度は低いが、イベント事は積極的に盛り上げてくれるので悪くはないイメージもある。
ムードメーカーな存在。ただしモテない。
「…誰?」
「おいおいおいおい、愛するクラスメイトの存在もわかんねえのかよ」
「愛してもねえよ高山」
「覚えてんじゃねえか!」
「で? 今私はボスのパンドラなんだけど?」
「バイトで数日間学校来れないって聞いたけどこれバイト?」
「うん。ほら、バトルすんだろ。さっさとやるぞ」
私は椅子に座らせる。
こいつも遺産を狙ってきたタチだろう。高山なら別に手加減もいらないな。馬鹿とはいえ一般入試でうちの学校に入ってきたやつだ。意外とテストの順位も悪くなく10位以内には絶対に入っているくらいにはできるやつ。ただバカ。たぶん普段何も考えてない。
「どうする? 特別にクラスメイトのよしみとして選ばせてやる。じんわり死ぬか即死ぬか」
「死ぬしか選択肢ないのかよ!?」
「当たり前だ。ここは私たちが守ってんだ。死ぬしかないだろ」
「死ぬために来たわけじゃねえ! 俺だってパン子に勝てる! さ、勝つぞぉ!」
どうやって負けるか選べつったのに。
まあいいさ。相手がやる気あるんならこちらも楽しめる。私を見てやる気なくして負ける気満々でやられるよりはこっちのほうが面白い。
特別に簡単なものにしてあげよう。私は運営にあるものを要求した。
すると、目の前にはリボルバーがおかれる。
「んじゃ、運ゲー、やりますか」
「……もしかして」
「予想通り、ロシアンルーレット」
「あ、やっぱ辞退するわ」
「逃げんな」
私は逃げようとする相手を引き留める。
「そんなつれないこというなよ。私だってイカサマとかしようもないんだからさ」
「俺こういうの運ないもん! 負けるもん! 頭脳戦だと思ってたけど運ゲーやだやだやだ!」
「そうごねるな。私も運ゲーは不得手だ」
運というのは私ですら介入ができない。
人はみんな運命の奴隷という言葉がある。まさにその通りだ。私たちは運命から逃れるすべはなく、みんなもうすでに決まっている。
「んじゃ、高山。さっさと始めようか」




