ゲームのバレンタイン
で、家に戻ってログインしたらバレンタインイベントは七時で終わっていたらしく、もう島の様子は見えなくなっていた。
しょうがないのでとりあえず金のクッキーを祭壇に持っていくが今回は特に何もなかった。枚数が枚数だしな。
「師匠! 本日は思い人にチョコを上げる日なのだそうですね!」
「ん? ああ、バレンタインね」
「師匠! これどうぞ!」
と、チョコを手渡される。
ほう。レブルは鍛錬してきますといって出ていった。そして、それと入れ替わるかのように今度はユウナがやってきた。
「…私はこの国の出でもないしこの大陸の人でもないけどこの大陸というかニホンではチョコを贈る習慣があるっていうから……。これ」
「ん、あ、ありがとう」
「…それじゃ、私仕事あるから」
ユウナは私にチョコだけ渡して去っていく。
ゲーム内だとモテるんだけどなぁ。ゲーム外だとあまりもらえないんだよな。そう思ってチョコを齧る。美味い、けどちょっとしょっぱい。ユウナのやつだけどこれ塩と砂糖間違えたのか?
何はともあれ、こういうのも味なもんだよな。失敗した手作りチョコも。
「パンドラ様…」
「ん? 今度はマリアベル?」
「これ、差し上げます」
「チョコ」
マリアベルがチョコを渡してくる。
私は受け取ると、そそくさと去っていった。恥ずかしい年ごろなのだろうか。そして今度は雪が集まってきたかと思うと、スノウさんとホワイトちゃんが登場。
なんだこの次から次へと……。
「久しぶりね、パンドラ」
「ええ、まあ、お久しぶりです」
「ニホン国ではなんかチョコを送る文化があるそうね? 私は別にいいけどホワイトがどうしてもあなたに渡したいっていうのよ。受け取ってもらえるかしら」
「おねーちゃんはい!」
と、ホワイトちゃんは真っ黒いものを私に渡してくる。
なんとうか、チョコというよりかは木炭に近いような感じだけどこれを言っちゃえば怒るだろうし素直に受け取っておこう。
ありがとうといって受け取るとわーいと喜んでいた。
「さ、渡したしここはもうじき春が来る。違うところに向かうわよ」
「うん!」
雪の大精霊って移動するんだ。
そりゃもう二月だ。だんだんあったかくなっていく頃だろう。雪の精霊だっていつまでもいられるわけじゃない、か。
雪がなくなるのはちょっと悲しいなとは思うが、また来年も降るだろうし……。
スノウ親子は去っていく。
それとすれ違うかのように今度は爆発音が響いたのだった。
その爆風は私の書庫の扉が吹き飛ぶレベルで。煙がもくもくと中に入ってくる。とりあえず窓を開けたが今度は何だろう。
そう思っているとひょこっと顔を出すカイハ。どうやらカイハの発明品が暴走したらしく爆発したらしい。無残な姿になった機械の破片がちらばっており、カイハもちょっと焦げている。生きてるっぽいけど。
「この俺様としたことが失敗しただと……」
「……カイハもチョコ?」
「ああ! 全自動チョコ作り機というものを作ってな! 単なるジョーク作品だ! で、それでチョコを作って食べさせようとしたんだけどな、どこか設計が甘かったらしい。くっ、この天才である俺様が失敗するとは不覚だ……」
「全自動、全自動ねぇ。材料とかは?」
「チョコレートの材料を投入すれば作ってくれるはずだったんだ。せっかくいいカカオ豆が手に入ったというのによォ」
カイハはチョコレートのを作ることもちょっと面倒らしい。
まあ、手順とかいろいろあるし仕方ないだろうけど。
「で、味の方は一番最初に使ったときは文句なくできた。これがそうな。一つ食べてみろ」
というのでアルミ箔を剥がし、口に運ぶ。
絶妙な硬さであり、ミルクの甘さとカカオの甘さが調和しているっていうか……。わりとマジでうまい。このレベルを機械で作るって相当やばい発明だな……。
「バレンタインはこれでしまいらしい。くっ、来年も待ってろ! これよりいいもんつくってやるから!」
といって破片を抱えて戻っていった。
今年のバレンタインゲームのキャラからたくさんもらえました。




