甲地のバレンタイン
白露の柔道部が終わったのは午後六時。
私たちは帰ることにした。が、まだ私は一つチョコが残っている。結局渡せなかったなぁ。あいつイケメンだから人気でめっちゃチョコもらってたから渡す暇なかった。
「ちょっと寄り道して帰るから先帰っていいよ」
といって私は向かうことにした。
私はインターホンを押すと、妹ズがでてきた。
妹ズは私が来たことを喜んでおり、わーい!といいながら遊ぼあそぼと引っ張ってくる。が、あの、もう夜遅いからこれ渡して帰ろうと思ってたんだけど……。
「はーい、なんです…って、パン子さん」
「よっ」
「あそぼー!」
「ごめんねぇ。もう夜遅いから。また遊びに来るからね」
といって宥める。
甲地も引きはがして、お母さんが妹ズを連れていってくれた。
「そ、それで何の用かな?」
「いや、今日そういえばチョコ渡せてないなって。お前イケメンだからめっちゃもらってるだろうけど迷惑じゃなかったら受け取ってくれない?」
「め、迷惑じゃないさ!」
「……そういう態度もイケメンなのかねぇ。すぐ人の好意を受け取るのはどうかと思うよ。ま、友チョコな」
私はカバンからチョコを取り出す。
一応配ったのとは別のチョコだし、友達に作る分は配った分よりめっちゃくちゃ凝ったから多分出来がいいと思う。砂糖と塩を間違えるなんていう漫画みたいなヘマもしてないだろうし。
「あ、ありがとう。こ、この場で食べてもいい?」
「いつ食べてもいいけどもうすぐ夜ごはんじゃないの?」
「い、今食べて感想を言いたいんだ」
「……それもらった子の前でいちいちやるの? 大変じゃない?」
「パン子さんにしかしないよ!」
……なに? 姑?
ケチつけるつもりなのだろうか……。
甲地はラッピングを解き、中のチョコレートを一口食べる。
「美味しい、美味しいよ!」
「そりゃどうも……。ま、それはなかなかの自信作だからな。あの忙しさでよくそんなクオリティができたなってぐらい」
「そういえば配ってたね……。あの生チョコも美味しかったよ」
「クッキーでもよかったけどそれじゃあいつら納得しないと思ったしな……。クッキーの方が簡単でよかったんだけど」
「あはは」
もらえないのはあいつらが飢え過ぎてるからだろうよ。
「で、甲地は今日いくつもらった?」
「えっと、31個はもらった、かな」
うわ、すげえ。
流石と言うべきか、白露より多い。顔はかっこいいし性格も悪くないから人気が出るのは当たり前だろうけど……。でも大方顔しか見てないだろうな。
甲地あまり女子と仲良くしてるところ見ないし。
「甲地って女子の友達あまりいないよね?」
「ん、まあ、うん」
「やっぱ顔なんだなぁ……。女ってやつは……」
「パン子さんも女子でしょ……」
「私は顔だけで判断しないからねー。たしかに視覚というのも重要だけどかっこよくても中身がクソだとすぐに嫌になるよ」
見た目がかっこいいことをいいことに好き放題するやつは特に嫌いかな。
だから騙されることはほとんどない。自分で性格を吟味して付き合うからな。
「んじゃ、渡したし夜遅いから帰るわ。ばいばーい」
「送ってくよ」
「いいって。んじゃ、また明日」
私は武宮邸を後にした。




