ヴァレンタインの感謝
あのリンネからプレゼントされたのは蛇。名前はわからないが、でかい。
その蛇が今私に向かって牙を剥いている。でかい口で飲み込もうとしているが、私はその蛇にむかってにらみつけるとビビったようで、勢いを失っていた。
そしてすぐに。
「シャアア」
と、私に猫なで声というか、従うようになった。恐怖で従えた感あるし、なんで私が睨んだだけで怯えるのかはよくわからない。
ったく、なんなんだよ。
それはそうとして、私はいま、金のクッキーを集めていた。
「ヴァレンタイン、今日は会えるかな」
会えたらいいんだけど。
たぶん私が黄泉の国に行ったと聞けば成仏というか、いなくなるはずなのだ。いや、わかんないけれど。
でも、ヒントをくれていたということだし、誰かに行きついてほしかったんだろう。だから彷徨って襲っていたのだという推理だ。
私は木を降りると歌が聞こえる。
「ヴァレンタイン、来たか」
私は振り向かず、そういうのだった。
歌はやまない。振り向いてはダメだから、振り向かずに言うしかない。
「ヴァレンタイン、私はこの島にある黄泉の国に行ったよ」
というと、歌が止んだ。そして、ちょんちょんと肩を叩かれる。私は振り向くと、司祭の服をきたゾンビがいた。
襲われない。振り向いてもよかったのだろうか。とりあえず証拠として私は蛇を召還する。
「シャアア!」
「……我が無念、果たしてくれたのか」
「ま、苦労したけどね。で、もう襲うことはないよね?」
「ああ……。黄泉の国がどういうところか知りたかったが殺された……。その無念を……ありがとう」
「ま、魔女以外いってはいけなかったらしいからね。殺されたのも仕方ない面もあるよ」
そういうと、ゾンビは涙を流していた。
「そうか……。私は禁忌を犯そうと……」
「そもそもなんで黄泉の国に?」
「死んだ我が妹の魂がそこにあると思い込んでいた。だから目指した」
妹の魂をどうするつもりだったのだろうか。
「あと一歩のところまで私は黄泉の国に近づいた。が、死んでしまった。だから夜な夜なこういう真似をしていた……」
「あれじゃ誰も気づけんよ……。そもそも黄泉の国があるってこと知らないんだから」
「黄泉の国目当てでこの島上陸するんじゃないのか?」
「いやいや、お菓子目当てで上陸するんだよ」
私はクッキーを齧る。
「気づかなかった。いつの間にかお菓子だらけに…」
「いやいや、彷徨ってたんだから……」
と、蛇も木になってるクッキーを食べていた。ぼろぼろと頭上に食べかすが落ちてくる。食い方汚いなおい。
「ま、何人か恐怖で動けないらしいからさ、そろそろ成仏してよ」
「悪かった。が、ありがとう。君のことは忘れないよ。お礼として私が持っていた武器を上げる。特別な武器さ」
と、斧を残して消えていった。
私は斧を拾いあげる。なんだか変わった斧だ。軽いけど、ものすごくなんか甘いにおいする。ペロッとなめてみるとチョコレートの斧だった。
それもビターなチョコ。これ炎天下で溶けてなくなったりとかしないよな?
「……ま、これでヴァレンタインもいなくなったし大丈夫だろ。で、いつまであんたクッキー食べてんの?」
「シャアア」
「いや、特別なクッキーあげるじゃなくて……。って、金のクッキーだけ分けて食べてるのかよ。器用だなあんた……」
金のクッキー数枚を手渡された。




