ヴァレンタイム
人をダメにするソファに座り、ログインする。
ログインすると、ユリカが焚火の前でマシュマロをあぶっていた。やるやる、それ超うまいよね。クラッカーに挟んで食べるとマジでうまい。
「あ、起きましたか。どうです? 食べます?」
「食べる」
焼いたマシュマロをもらう。
「クラッカー…ビスケットある?」
「え? ええ、ありますが」
「溶かしたチョコレートはある?」
「もちろんです。っていうか出せますよ」
といって魔法を唱えると目の前にクラッカーと溶かしたチョコレートが現れる。すげえ、手品みたいだ。
私はクラッカーの上に焼いたマシュマロを乗せる。
「ほう!」
「この上に溶かしたチョコレートを…」
「あーダメです! これはだめです! 絶対美味いですよっ! いけませんいけません! 貴族なら絶対に手を出してはならない禁断の領域ですねっ! でも~、私はもう貴族じゃありませーん!」
「それをもう一枚のクラッカーではさむ!」
「いやぁぁぁっ! 聞いただけで美味しそうっ! 私もやりまーす!」
と、マシュマロをもう一つあぶっていた。
私はクラッカーサンドにかみつく。やっぱうめえよ。最高。美味いなぁ。めちゃめちゃ美味い。私はあっさりと完食した。
隣ではユリカが私がやったような食べ方をしている。
「んー! うみゃあい! なんてうみゃいんですかぁっ!」
「これの難点は滅茶苦茶カロリーが高いってことぐらいだね」
「ダイエットの天敵ですねぇ。あ、天敵っていう言葉で思い出したんですが」
「ん?」
「このチョコレー島は私が引き継いだんですよ。で、その力を受け継いだ自分でまた一から作りなおしたんですが、この力の前の継承者が言うには必ず夜には気を付けろということでした」
「夜には気を付けろ?」
この島の夜にはなんかあるのか?
「凶暴な亡霊が食べ物を求めて彷徨っているのだとか。前の前の魔女はその亡霊にやられて首がなくなってしまって死んだそうです」
「マミったか」
「その亡霊の名はヴァレンタイン。私たち魔女は夜をヴァレンタイムと呼んでます」
「ふぅん……」
「ただ、その亡霊を倒すとなんかいいものがもらえる、とはいっておりますね」
なるほど、ボスか。
夜、この島を徘徊するボスに気を付けろということ。つまりあの夜あの洞窟でログアウトしたっていうのは間違いだったのだ。
運がよかっただけで悪かったらヴァレンタインに襲われていたということ。この島に魔物はいないと思っていたが……。
「お菓子の亡霊ヴァレンタイン。お菓子が大好きだったヴァレンタイン大司教がこの島の魔女に殺されてしまってその怨念でこの世をさ迷っているらしいです。女性を見ると魔女だと勘違いして襲いにかかるのだとか」
「まんま現実に則ってるな」
バレンタインデーもバレンタイン司教の命日だからなぁ。
「気をつけてくださいね。もうじき、夜が来ますから」
「日が落ちかけてきてるね」
「この家は神聖な結界を張っているので襲いに来ません。あと、彼は水周りには来ないというので寝るならここか水回り…サイダーの泉の周りなどがいいでしょう」
「ん、忠告ありがとう」
私はとりあえずお菓子を食べに行くことにした。




