先生からのアドバイス
いつぶりだろう。こんなに泣いたのは。
両親が自殺したときも、こんなに泣くことはなかった。月乃、白露と友達になったとき以来だろうか。私は、両親の事を口にすると思わず泣いてしまうらしい。
「その、さ。先生も……人間不信になる気持ちはわかるよ。私もね、信じることができなかったんだ」
「……先生も?」
「うん。私もね、二回くらい自殺しようとしたことがあったんだ。どっちも失敗に終わったけどね」
といって、広瀬先生は左手首を見せてくる。
そこにはリスカしたんだろうという跡がくっきり残っていた。
「やっぱり人にはあまり見せたくないね」
「広瀬先生……」
「……そのさ、私も家族が原因だった時もあるんだ。自殺したのって」
「家族……?」
「いじめられててさ、両親に泣きついたんだよ。学校行きたくない、辛いって。でも辛いのはみんな一緒だって言われてさ、味方になってくれないって思ってたんだ。いじめのせいで陰鬱になってて、最後に妹にお姉ちゃんなんか死んじゃえって言われて……そのあと、橋から飛び降りたんだ」
広瀬先生のそんなことがあったのか……。
「でも、やっぱり私は恵まれていたんだね。今話を聞いて後悔したよ。なんであのときあんなことしたんだろうって。親がいるだけシアワセなんだなって思うべきだった」
「……」
「その、さ。夢野さん。私には何も言えない。けど……話してくれてよかったよ。私なんかじゃ寂しさを紛らわせないと思うけど、話しかけてきて。私は大人だからさ……信頼している人をめいっぱい頼って。それが先生から言うこと」
先生がそう言ってくれた。
そう、だよな。月乃、白露。どちらにも頼るべきだ。
「それに、先生からアドバイス。人を信じるためにはね、恐怖を押し切ってしまえ」
「恐怖?」
「信用できないということはその相手が怖いってことなんだよ。怖くても、任せてしまおう。そこから始めてみようか。人間不信を治すの」
「……治したいって、わかったんですか?」
「うん。寂しいってことは、人のぬくもりを感じたいってことでしょ」
その通りだ。
私はきっと、まだどこかであきらめきれていないのかもしれない。でもまぁ……。
「ゲームでは変わりませんけどね。どんな極悪非道なこともしてみせますよ」
「うん。まぁ、ほどほどにね……?」
悪さ上等。
広瀬先生も、苦笑いをしてそういってくれた。
「こんなとこにいたのね。っていうか目が腫れてない? パン子」
「泣いていたのか?」
「うーん。まぁ、恥ずかしながら」
「別に恥ずかしいことじゃないだろ。喜怒哀楽があるのが人間だしな」
白露がそう言ってくれる。
やっぱり、優しいんだよなぁ。そう思っていると室内の扉が開かれる。必死の顔の教頭先生だった。
「教頭? どうかしましたか?」
「夢野さん! 夢野さんはいるか!」
「はい? いますけど。私なんかしました?」
「お、叔父さんが……倒れたらしい」
…………。




