その老いることない体を捧げよ ①
どうやら連れてくることは不可能だったらしく、アイリーンはごめんなさいと謝ってくる。
動けないとなると関係ない……。いや、待て、私はなんか勘違いをしていないか? ヒルダさんが殺されたトイレ……。何か引っかかるな。
……もしかして、殺されたのはトイレだけど最初はここで襲われていたとか?
「わかったかもしれない、ヒルダさんが殺された理由」
「わかったってなにがだ?」
「ヒルダさんはトイレで殺されたけど、殺される前にここにきてたんだよ。この鍵穴は当時も鏡で隠されていたんだと思う」
となると四番目の七不思議とも合点がいく。
解けた。たぶんこの謎は解けた。
「この鏡はたしかヒルダさんの骨で作られたとかいっていなかったか?」
「そう。だけど違うんだよ。たぶん前の鏡が割れるかなんかして、使い物にならなくなったから新たにヒルダさんの死体で作られたんだ」
あの落ちた子は鏡が反射した光が気になり身を乗り出し、誤って落ちてしまった。それがあの事故の真相だと思う。
で、その事故の事を調べた創始者がヒルダさんがここに来ていたということをしり、証拠隠滅を図ろうとして殺害しようと目論み、ヒルダさんが逃走し女子トイレに追い詰められ殺害された、ということだ。ヒルダさんじゃなきゃいけなかったんじゃなくてヒルダさんがここに来てしまったから殺されたと考えてもいい。
何より、ヒルダさんより先に女の子が死んでいるのが証拠だ。
で、なぜ四番目が変わったかというと、実際にやられたら気づかれてしまう可能性があったからだ。私みたいにこう鋭い人は結論に行き届いてしまうかもしれないという危惧があった。だからこそ変えたんだ。
実際、あの渡り廊下からこの更衣室は見える距離だし、それで気づいてしまったら財宝が自分の者じゃなくなると思ったんだろうな。
私がそういう推理をすると、なるほどといったように感心していた。
「疑問がある。なぜ理事長は隠し場所を変えなかった?」
「変えなかったというより変えられなかったというのが正しいかもしれないね」
「変えられなかった?」
「この鍵を紛失したから開けなかった。だからこそ変えることができなかったから仕方なく変えなかったということだろうよ」
「……先生、もうあんたは確信づいてるな?」
「もちろん。取り出せなかったんだから財宝は……ある可能性が高い」
おそらくきっと、この中にある。
だが、中に何があるかはわからない。用心することには越したことはないだろう。私が先頭に立ち、中に入るよと言うと、何者かがこちらに走ってくる音がする。
そういえば、気にかかることがまだあった。
聞き流していたが……。そういや、変わった四番目の七不思議にもまだ疑問点はあったんだ。
クロムが見た、幽霊の正体は?
「みんな、私の後ろに立ってて。ボスのお出ましみたいだよ」
と、私たちの目の前に、ナイフを構えた女性が立っている。
生きてるかどうかも分からない。いや、死んでいるのかもしれない。モンスターに近いなにかだ。私は目の前の女性を見る。
「おいおい、こいつは驚いたぜ……。創始者だぜ、こいつぁ……」
「この学校創設ってたしか何百年も前……。なのになんで……?」
「これは夢か? 夢なのか? 普通なら死んでいるはずの創始者がなぜ……」
今だ尚生き続けている創始者だったのだ。クロムが見た幽霊の正体は。




