過去の深淵、覗き込め
みんなに悪役だと言われて少し傷つきながら帰ってログインする。
いいもん。私はゲームで心を癒すもん! 美しい景色でも見て……!
私は渡り廊下に赴き、景色を眺めることにした。と、その瞬間、危うく落ちそうになり……。
「っと、あぶねえ。柵があるとはいえ身長によっては落ちる高さだ……よな?」
何となく気づいた。
四番目の七不思議の謎! わかった! アレは洗脳でもなんでもなかったんだ。あれは単に事故で落ちただけなんだ!
だが、事故、事故ね。事故だとしても噂が変わっていたということ自体が気にかかる。私は渡り廊下で周りの様子を見てみると、なにかきらんという光が見えた。
「あれは鏡だな……」
たしかあの部屋は更衣室だ。
この学校の構造として渡り廊下から更衣室を覗けるという弱点がある。鏡が見えるのも不自然じゃ……。いや、不自然だ。
あの鏡は、窓の方に向かってついてるはずなんだ。なのに、なんでここから見えてるんだ?この位置からだと窓は完全に死角になってるはずであり、ドアガラスが少し見えるだけだろう。誰かが動かしたと考えてもいいがなんのために? なんでドアに立てかけられている? あの状態では出ることができないだろう。
「何者かがいる、のか?」
あの状態からして誰かがいるのは間違いがないかもしれない。
「だがどうやって入る? ドアは完全にあの鏡のせいでふさがってるし窓から入るにも高いかつ、カギがかかってるから無理だとすると完全に密室状態なんだよな」
ま、行ってみたらわかるだろう。
私は渡り廊下を去り、急いで鍛錬場の更衣室に向かう。ドアの前には鏡らしき影があり、開けることができなかった。
どうしたものか……。
「お? 先生どうしたよこんなとこで」
「あ、ああ。中に入れなくて困ってて」
「んなもん普通に……。って、何かにふさがれてるな。中に誰かいるのか?」
「さあ?」
「……ま、怪しいな。とりあえず、強引にぶち破らせてもらおうぜ」
と、クロムは剣を抜いた。そして、クロムは扉を破壊、鏡が私たちの上に倒れこんでくる。クロムが手で支えるが……。
「重い……! 相当ヘビーだぜこりゃあ……。正直、俺一人じゃきつい重さだ」
「そんなに?」
重そうに鏡を抱えるクロム。
すると、誰かが支えに入ったのだった。アイリーンだ。アイリーンは軽々と鏡をもちあげ、そして優しく地面に置いた。
「さすが力持ち! 頼りになるぜ!」
「何事よもー。っていうか、好きでこんな怪力じゃないんだから」
と、憤慨しているようだった。
クロムはアイリーンを宥めて、私は更衣室のほうを見ると、鏡が設置されていたはずの壁に一つのカギ穴があった。
この後ろには構造上なにもなかったはずなのだ。
「鍵ってこれか?」
以前手に入れたサファイアが付いた鍵をその鍵穴に差し込むと、中吸い込まれるようにして入っていく。そしてカチッという音がした後、目の前にはブラックホールのような、そんな感じのものが開かれたのだった。
だがしかし、それと同時に。
『避難警報! 生徒の皆さんは落ち着いて校舎内に逃げてください! 繰り返します!』
というアナウンスが流れる。
クロムたちはその校内アナウンスを不思議そうに聞いていた。窓の外を見ても特に何もなく、また、校舎内にも特にこれと言った異変はない。
「もしかして、これのせいか?」
「そうだね。早いところこの中探索したいけどグルツが……」
「あいつそういや来てねえな。どこに……」
「ここにいる」
と、グルツがロッカーの横からひょこっと顔を出した。
「うおお! なんでそんなところにいんだお前!」
「更衣室を調べていた。鍵穴を見つけたもんで鍵がないか探していたら急にでかい音がしてな。危険だから隠れていたというわけだ。まったく……」
「そ、そうか。密室になっていたのはグルツが原因か」
なにか謎が解明されたと思っていたが、グルツのせいか。
「ふむ、先生が鍵を持っていたとは。どこにあった?」
「これは桜の樹の下……。そうだ、アイリーン。女子トイレあるだろ? そこにヒルダさんいるから鏡をもってちょっと向かってくれないか」
「なんで?」
「いや、ヒルダさんが関係してないはずがないんだよ。だから連れてこれないかなって」
「わかったよー。でも一人じゃ怖いから、グルツ一緒に来てー」
「わかった」
と、アイリーンは鏡を片手に持ち、ルンルン気分で向かっていた。怖いもくそもないだろあの様子じゃ……。




