誰も知らない七不思議 ④
七不思議四つ目は13階段だった。
「俺もここにはあまり近づきたくないんだ。なんていうか、ここだけはマジで出たからな」
と、頭を掻きつつあまり気分が乗っていないようだった。
校舎内の東階段。そこはあまり人が通らないらしい。なにしろここだけは昼夜関係なく幽霊を見たという目撃情報があるんだとか。
ある女子生徒は「階段をゆっくり上っていた」
ある男子生徒は「階段の踊り場の隅で体育座りしてこちらをじっと見つめていた」などなどだ。まあ、階段にまつわる七不思議もあるあるだ。
なんていうか、現実にある定番七不思議をちょっと模してるのか?
「……その、実はというとここ12段しかないんだ」
「……」
「一段、増えてるらしいんだよ」
「ほう……」
私はとりあえず数えてみることにした。
1、2、と軽快なリズムで数えていく。
「じゅう…さん」
たしかに13段あった。
昼間は数えたことがない、が、これは理由がある気がするんだ。数え方が違う。最初の一歩踏み出した時に一段とするか、それとも一歩数えてから上っていくか。私は実はというと後者の方だから13になっただけ。
要するに13段のほうは数え方の問題なんだと思う。
で、前者のほうの数え方をしてみたらたしかに12段だった。段数が変わるのは単なる出まかせだと思う。
13階段というのは単なる嘘の可能性が高い、が、幽霊の目撃情報がある以上は嘘だとは言い切れないが、単にここが出るスポットってだけで七不思議とは何の関係性もないと考えていいな。
「……だけど数え方の問題っていうのが引っかかるな」
ならなぜ七不思議にしたんだろう。
あのトイレのヒルダさんは死と関係しているといった。だが、この七不思議には、死と関係がないと考えていいだろう。
ここで誰か死んだならともかく、ただ一段増えるだけならば……。
「おい、早く戻って来いって先生! 俺は早く次のところ行きたいんだからよ!」
「ちょっと待って、クロム、ここで誰か死んだとか聞くか?」
「聞かないな。足を滑らせて怪我をした奴なら聞いたことはあるがここで死んだ人がいる、ってのは聞いたことない」
となると……となるとだ。
過去の文献を漁って調べるしかない。13階段は多分違うんだよ。
「アップル、ここに幽霊はいる?」
「そういえば何も感じないわね。幽霊…がいるとは思えないわ」
「だよな」
この七不思議はでっちあげか、それとも人の口で伝わるにつれどんどん変わっていった感じのようだ。本当の七不思議はもう一つあることは確定かな。
クロムが聞いた噂もその曲げられた七不思議だったんだ。
「クロム、さっきの幽霊の話と照らし合わせると不自然な点はない?」
「ああ、俺も何となくはわかった。あの幽霊は死と関係してるって言っていたもんな。ここには幽霊はおらず、誰も死んでないとなると……。たしかにおかしいな。やっぱりどこかで間違ってるのか。だけど、図書室にも七不思議に関係する本はないぜ?」
「となると自力で四つ目も探さなくちゃいけないか」
大変だなぁ、骨が折れるなぁ。
「その話はあとにしようぜ。もういこう。俺はここにあまり長居したくないんだ」
といったのでその場を後にし次の七不思議の場所に行くことにした。




