誰も知らない七不思議 ①
アヴェールが紹介してくれたので非常勤講師という立場を手に入れた。
私は少しの間寮に泊まることになる。先生方も寮で寝泊まりするらしく、私に割り当てられた部屋は物置部屋みたいな感じだった。
だがしかし、問題はない。如何せん部屋がなかったということで、たしかに部屋がなかった。
「よ、先生。あんたならなると思ってたぜ」
と、部屋で寝転がっているとクロムが部屋の扉を開けてやってきたのだった。
「来たか」
「来てやったぜ。さ、この学校を探索しよう。ま、俺は一応大まかに探検したんだが、地下につながる階段もなければ怪しいところもなかった。どうなってるんだろうな」
「うーん。私は校舎内全部見回ったわけじゃないからなー。まだ見当はつかないかな」
「そうだと思ったぜ。俺と一緒に探検しつつ探していこうぜ」
というので、案内してもらうことになったのだった。
深夜というので、先生方も見回りに入っている。
見つかると部屋に戻れと言われて連れていかれるらしいので見つからないように移動するのがいいんだとか。
「ここは校舎の裏庭だな。地図で言うと学校の一番角っこのところだ。ここにはある七不思議があってあそこのでかい木の下で好きな異性に告白すると必ず成功する……っていうんだが、胡散臭えよな」
「ふぅん……」
怪しいのがいる感じはない。
ただの七不思議だろう。ここには不審な点は特になさそうだ。いかにも整備されてない誰も使ってない裏庭だとしか思えない。
ただ、七不思議、七不思議か。
「七不思議って誰が作ったんだ?」
「さあ? 俺も知らねー。俺が入学したときにはすでに噂として広まってたぜ」
「へぇ」
出どころが分からない七不思議。
「ちなみにあの樹の品種は?」
「桜、だった気がするな。春ごろには満開の桜が咲いているはずだ」
「桜の……ね」
なんとなく気にかかる七不思議だ。
そもそも、七不思議というのはどこの学校にも存在はしている。有名なので言うと人体模型、トイレの花子さんとかだろう。
木の下で告白して成功する七不思議もなくはない。だから疑問点は特にはない。
「ちょっとほかの七不思議も教えてくれない? その場所にいって」
「わかった。俺も全部は知らないんだけどな」
「全部知らないの?」
「ああ。七不思議って言う割には広まってるのは六つで、七つ目は誰も知らない。先生方も、理事長も。誰も知らない七つ目があるんだ」
「もしかしてそれが?」
「財宝のありかにかかわってるんじゃないかとは思ってる。七不思議って言うのに七つ目がないっていうのは違和感しかないからな」
なるほど。
まずはその七つ目の七不思議を探せというのが課題になるだろう。七つ目の七不思議……。それはなんなんだ?
誰も知らない、わからない七不思議。もしかして六つの七不思議が暗号となっているのかもしれない。
裏庭、桜の樹がキーワードかな?




