がなる母親、不信の目
私が街中で偶然武宮を見つけたので声をかけてみた。
「おーい甲地ー」
そういうと、甲地もこっちに気づいたのか声を……かけてくるとかと思いきや、その場を走り去っていっったのだった。
急に走り去る甲地を見て、私ははてなが浮かんでしまった。
「どうしたんだアイツ」
私の顔を見るや否や血相を変えて逃げていった。
そこまで私が嫌か?と思ってしまったが、まあ嫌われるぐらいは別にいい。けどどうして逃げるんだろう。甲地の性格を考えてみても挨拶もせず逃げるというのはまずないはずなんだよな。
謎が謎を呼ぶ。
「調べてみるか」
甲地がなぜ逃げていったのか。
顔を見ればどことなく私に不信感を抱いているような顔をしていた。誰かに騙された、とかだろう。しかも身近なやつに……。
詐欺、ということだろうか。身近な人に詐欺を行う人がいて、自分、もしくは母親が騙された、とか?
「ま、調べるつっても家分からないし意味ないんだけどね」
私はそのまま帰り路をたどった。
翌日、また翌日と甲地は学校を休んでいた。
先生も毎日来ていた甲地が来ないということをいぶかしんで、誰か家に行ってくれないかというので、こういうときパン子がいいんじゃないと誰かが言ったので家を教えてもらっていくことになったのだった。
「私一人だけっておいおい」
普通もう一人ついてくるんじゃないの? と思いつつ、インターホンを鳴らす。
すると、普通に扉が開かれ、女性が出てきた。甲地の母親だろうか。ものすごくやつれており、私を睨んでくる。
そのあまりにもひどい表情に私は思わず一歩引いてしまった。
「何の用! 用がないならインターホンを鳴らさないで頂戴!」
クラスメイトはこの人の状態が分かってたから私を行かせたのか?
「ああ、武宮君が学校を休んでるから何事かと思いまして。だいじょぶですか?」
「それだけなら早く出ていって頂戴!」
がなりたてる甲地の母親。
怒る理由が分からない。が、私にもこういう態度となると人間不信になっている可能性があるかもしれないな。いや、なっているだろう。
誰も近づけたくない。信じられるのは誰もいない。そういう状態だ。近づけさせないように怒鳴ってる。
初対面なのにこういう態度とられるとすごくムカつく。
「なんでそんなに私にがなりたてるんですか? お宅が詐欺被害にあったこととは何も関係ないでしょ? 私は」
「あんたも詐欺師ね!!」
というと、背後から男性が。
甲地だった。甲地は母親を押さえつける。
「い、いらっしゃいパン子さん」
と、あまり歓迎してないような顔で出迎えられたのだった。




