悪夢が終わる解放の時
ローキッスを連れて地下に戻る。
「カイハ! 魔力を溜める装置ってどこにあるかわかるか!」
「この設計図だとこの壁の中や!」
「了解!」
壁をぶち壊すと中からフラスコみたいな形をしたものがあった。
今は放出して空なのか中に何もない。私はローキッスをそのフラスコみたいなところにぶち込んだ。ローキッスはガラスをばんばんと叩く。
「どういうことか説明しいや! なんで俺いきなりこんなとこ閉じ込められんねん!」
「あんた神だろ! 膨大な量の魔力行くからそれ全部どうにかしてくれ!」
「はあああ!? いきなりなんや! 膨大な魔力!?」
「この国を滅ぼしかねない魔力。どうにかできるでしょ?」
「ま、まあできんことはないが……。先に言えや!」
「ごめん! でも急ぐんだ! 説明してる暇も惜しい! で、覚悟はいい?」
「わかった。これでも神や。今までの罪滅ぼしにならないかもしれんがやっちゃる」
ローキッスは座る。
「カイハ! 魔力を集めろ!」
「信じるぞ! ローキッス様よ!」
と、カイハがボタンを押したのだった。
結果。
大成功だった。ローキッスはさすがに疲れたのか地面に寝転がっている。カイハも疲れたのか、その場でへなへなと座りこんでいた。
私とアデュランも壁にもたれかかる。
「や、やった! 終わった……」
「本当に問題はないんだよな? カイハ殿よ」
「あ、ああ。膨大な魔力はローキッス様がどうにかしたはずだぜ。ローキッス様に感謝しやがれってんだ……」
「こんな一気に来るとは思わへんて……。つ、疲れたぁ」
地上はどうなっているんだろう。
今確認しに行きたいが、気疲れのほうが強かった。すると、今まで気絶していたゴルフェル会長が目を覚まし、暴れだす。
「貴様ら! 残念だったな! 私はもう終わるんだ! なら、この国ごと……! って、あれ、精霊がっ……」
「ゴート・ゴルフェル殿。こんなことをしなければ罪はまだ軽かったかもしれないものを……。とはいえ、今の我々は捕まえる気力がない。しばらくそのままでいろ」
「なっ……!」
「あんたのやった装置、本当に悪夢を生みやがったな。この国を混乱に陥れやがって。国家反逆罪が起用されるか? 地獄いきおめでとさん。よかったね特等席だよ」
「なぁっ……」
ゴルフェル会長はうなだれた。
☆ ★ ☆ ★
レオンが窓から覗き込むと、魔物の姿は見えなくなっていた。
その瞬間、王は膝から崩れ落ちた。他の人たちも歓喜のせいか、そのまま座りこんだ。もちろん歓喜に包まれたのは王だけではなく民衆も。
魔物が去っていきましたという報告が避難所に入ると、国民は喜び、戦っていた冒険者やプレイヤーは雄たけびを上げた。
「終わった……」
「最後までパンドラは来ずじまいか」
「あの薄情野郎……。魔王城にきたらぶん殴ってやる」
「だな」
「魔法攻撃ができるボクシンググローブ、ちょうど二つあるわ」
ワグマとビャクロもその場に座りこんだ。
街の被害も建物が数十棟破壊され、冒険者もたくさん死んだ。だがしかし、国を守ることができた。王都は落ちなかった。
「でもいったいなんだったのこれは……」
「さ、さあ。だが終わったんだ。もういいだろう」
「そうね」
プレイヤーたちはたちあがり、自分たちの拠点へと戻るのだった。
そして、そのままログアウトしていく。
プレイヤー、いや、王国を巻き込んだ悪夢はすべて払われた。
みんな、夢から覚めたのだった。




