ニホン国の悪夢 ④
ここは地下だから敵に襲われる可能性は少ないと考えていい。
必死こいてカイハは機械に向かっている。一心不乱にプログラムを改変していた。カイハは事態をようやく飲み込めたのか、それとも自分がやらなくちゃこの国が終わるとわかっているのか機械から目を背けもしない。
「この機械が地上での惨劇を……いったい誰が作ったというのだ……」
「さあ」
私はなんとなく想像はついているが、この世界では現実味がなさそうだし、私としてもあくまで憶測の域でしかないので得意げに言えるわけじゃない。
アデュランと、兵士、そして囚われた商会の人をこの地下に押し込め、私たちは必死にカイハの様子を見守っていた。
「クソっ! これじゃ十分以内に終わらねえぜ! 複雑すぎて何をしたらいいかわからねえ……!」
カイハが頭を抱えていた。
「だが、やるしかねえんだろ!? なんで俺様がこんな目に!」
必死に手を動かすカイハ。
すると、突然精霊を閉じ込めていたガラスが割れ、中から液体が飛び出てきた。周りにはモンスターの気配を感じない。
どういうことだ?
「なるほど、これは解放……。力の源を失った! 残存魔力だけでやるとするならあと十分ぐらいになるぜ! わかってきたァ! 俺様やっぱ最強だぜェ!」
兵士は精霊に駆け寄った。
「大丈夫か! 息は……している。だが、魔力がないみたいですアデュラン様! どういたしましょう!」
「私が分け与える」
私は精霊の体に触れ、魔力を少しずつ分ける。
四人封印されており、四人ともに分けるとなると私の魔力は0に等しく、体が少しだるかった。精霊たちはすやすや寝息を立てはじめ、少しは回復したようだった。
「俺様の予測じゃここをこうすれば供給も収まるはずだ、ぜ!」
と、カイハがボタンを押した。
が、地上の様子が分からない今、何が起きているかわからない。カイハを信じるしか方法はない。カイハはなお続ける。
だがしかし、カイハは手を止めた。
「まずい! 供給を止めるのは失敗だ! こちらが吸引状態となって魔物たちにやった魔力がすべてこちらに戻ってくる!」
「だ、大丈夫じゃないのか? そ、それで終わりでは……」
「なぜ精霊を長い間封印してきたんだ! じわじわととるためだ! その量が一気に来たら魔力過多だ! 暴走してここはなくなるかもしれねえ! この魔力量だ。もしかしたら王都全域に広まるかもしれねえぜ!」
「なっ……!」
魔力のメーターはぐーんと一気に上がるのだった。
カイハは急いでプログラムを変更し始める。この状況の打開策はどうしたらいいんだ。私も考えてはいるが思いつかない。
そういうスキルがないのだ。
「せめて魔力を無尽蔵にでも貯めれるようなもんがなきゃきついぞこれは」
私はそういうの見たことがない。
「どうするよ王子様よォ! 俺様はあんたの指示に従うぜ!」
「お、俺の指示……」
「どちらを選んでもこの国の終わりだぜ! 好きな滅び方を選びやがれってんだ!」
「滅ぶしか未来がないのか……! だがしかし、諦めるわけにはいかない!」
「それが無理だから選べってんだ! 止めても地獄、止めなくても地獄なんだぜ! どちらもどうせ死ぬしか道はねえ!」
本当に、ここで終わるのか?
いや、終わらない。ようするに、止めて吸収される魔力をどこかにやればいいんだろう? そうだ、こういう時の神頼みだ。
思いついた。私の予測ならきっと……。
「ちょっと耐えてろカイハ!」
「ど、どうするんだ!」
「打開策があるかもしれない!」
私は地上に出てモルを呼ぶ。
そして上空からあるやつを探していた。どこかにいないかなーと思っていると、宙を舞っていた。
「あんたどこいっとったんや」
「ちょうどいい時に! ローキッス、ついてこい!」
「はあああ!?」
私はローキッスの腕を掴み、そのまま強引に引っ張っていった。
どうあがいても絶望…?




