ニホン国の悪夢 ③
その頃地上では、惨劇が起きていた。
レオンは頭を抱える。耳に入ってくる報告が、村が壊滅しただのなんだの。もちろん全力でこの事態に抗う貴族もいるが大半は逃げ出しているようだ。
それはまさしく悪夢に等しかった。
大事な国民が、小さい蟻のように死んでいく。
必死に抗い、守り続ける冒険者も死んでいく。その悪夢がレオンを悩ませていたのだ。アデュランも戻ってこないのも相まって、常に思考を巡らせていた。
「歴史上初めてだ……このような魔物の大量発生は……」
いつものような魔物と違うという報告を受けている。
数十倍くらい力が違う、タフだという話も聞く。急にパワーアップしたという感じらしい。一体全体どういうことだろう。
投げ出したいという気持ちがレオンの頭をよぎるが、すぐにそれはダメだと考え直す。
「どうすればいい……。どうすれば国民の為に……。と、とりあえず大量発生が起きた原因を探れ! この絶望的な状況を覆すには……。オールランド王国、ルフラン神聖王国に援軍を求めよ! ただちにだ!」
「はっ」
臣下に命令し、レオンは玉座に座る。
王である自分はこの城から出てはならなかった。だからこそもどかしい。自分も国民の為に剣を持ち戦いたい、この国を守りたい。
王の願いは国の平和ということだけなのに、災難ばかりだった。
「だがこの災難も、彼女ならきっとなんとかしてくれる……。私にはこういうことしかできないが祈るしかない……」
☆ ★ ☆ ★
この状況は何だろうか。
ニホン国王都の門が突破され、中に入られてしまった。腕を食いちぎられ、倒れこむ人がいる。プレイヤーたちは戦う人と避難させる人に分かれて戦っている。
「どうなってんだこの強さは! 俺たちのレベルよりはるかに上だぞ!」
「これ、攻撃当たったら痛いだろうな……」
「一体何が起きてんだよ!」
三人のプレイヤーが剣で魔物とつばぜり合いしていると背後に二人の女性が立っていた。
「せい!」
「おりゃあ!」
一人の女性は大剣でモンスターをぶった切る。
一人の女性は拳でモンスターを吹っ飛ばす。限界が来ていた三人は彼女たちを見つめた。
「ホントに何なのよこれはァ! なんで魔物が狂暴化しているの! 頼みの綱のパンドラも来ないし!」
「無駄口をたたいてる暇はなさそうだぞワグマ」
「まだくるの!? あんたたち! ここは私たちがやるから避難者でも案内してなさい!」
と、三人の冒険者は従い、避難者の誘導をし始める。
ワグマは大剣を構え、目の前のモンスターの大群をみる。冷や汗が止まらなかった。
「幸いにもレベルは互角ぐらい。原因不明でいつまでも続く。原因解明役のパンドラも来ない。どうすればいいのかしらね」
「わからん。が、私たちがやることはただ一つだ」
「そうね」
ビャクロとワグマは敵に向かって突っ込んでいった。
魔王軍も総出で駆り出され、ユウナは敵につっこんで身軽な体を生かし動き回り翻弄し敵の弱点部位を切りつける。
レブルは持ち前のチート能力で、ウルフもがむしゃらに戦っていた。
終わらない猛攻、プレイヤーたちには次第に恐怖が湧いてきていたのだった。
いつまでも猛攻は収まらず、勢いを増していく。もう終わるんじゃないかとプレイヤーは諦目の心がある。
悪夢が、プレイヤーたちをも飲み込んだ。




