熱出した
もうすでに学校は始まっており、体育の時間。
「ほら! もっと動ける! 冬の寒さが何だ!」
と、妙に暑苦しい先生が体育の先生の代わりとしてきてしまった。
筋骨隆々だし、差別することはないらしいが、結構暑苦しくて苦手なタイプだ。私自身運動がそんな好きってわけじゃないのでなおさら苦手。
だがしかし手を抜くとすぐばれるんだよ。
「も、もう無理っ……! 体力がない……」
私はヘロヘロになって走っていた。
高校の周りを三周ということで、ビャクロはすでに走り終えてゴールしている。私はまだ一周しか終わっていないのだ。
月乃は三周目というのに。
「ほら頑張れ頑張れ! 夢野君!」
「頑張れ、じゃ、ねぇ……」
私は息を切らしながら、走る。
歩いたほうが早いというくらいには遅かった。もう限界が近い。てか、限界。少し休もうとして立ち止まるとどうしたと肩を叩いてくるので休めやしない。
こういう暑苦しいの嫌なんだよ。広瀬先生は気遣って大丈夫とか声をかけてきてくれるんだけどこの人追いうちしかしねえ……。
「先生、パン子は限界ですよ。もう終わらせてあげては……」
「ダメだ! みんなも三周走ったんだ! 差別はよくない」
いや、正しいのは多分先生だけど無理なんだよもう……。
体が熱い。頭がふらつく。私はその場で倒れるのだった。
目が覚めると保健室だった。
「あ、あれ、保健室?」
「そうよ。あんた熱出してぶっ倒れたのよ。風邪ひいたんじゃない?」
「風邪ひくとは軟弱だな。私は一度もかかったことないぞ」
「馬鹿は風邪ひかないって昔から言うからね」
「そうだな。私バカだし風邪ひかないな」
「ただバカは風邪ひくけど風邪ひいたことに気づかないだけなんだけどね」
私たちがそう笑って話していると保健室の扉が開かれる。
入ってきたのは先ほどの体育教師の松村だった。松村は私に頭を下げてきたのだった。
「すまん! 熱を出してると気付かなくて! 俺のせいだ!」
「あ、いえ、別に……」
「もう親御さんには連絡してある。ありのまま伝えた。すごく怒っていた」
「だろうね」
なんていうか、今まで構わなかった分過保護気味になっているのだ。うちの叔父夫婦は。
「その、今後こういうことがないよう気を付ける。悪かった!」
「いいですよ別に……。熱血教師ってのはそんな悪いものではないですし」
私は熱でふらつく頭を押さえる。
今日は早退しよ。今まで無遅刻無欠席……ではなかったわ。遅刻してるわ。だから別に早退ぐらいいいしそれに授業はたいして意味はないからな。
高校で習う分は既に予習して頭に入ってるしなんならもう大学で習うものも終わってる。
「寝るからもう行って」
そういうと、お大事にといって月乃たちは戻っていくのだった。




