精霊の子供
私が疲れ果てて魔王城に戻ると、何かが私の上にのっかってくるのだった。
見た目は人間の子供。だが、実のところは精霊だったりする。なぜ魔王軍の城の中に精霊がいるのだろうと疑問に思う人もいるだろうから説明すると、これはミキ先生の卵の中身だったのだ――
「おねーさまああ! あそびましょー!」
「ええ……」
この世界では精霊は神の子といわれている。
眷属とは違い、精霊は神の子だから傷つけてはならないと言われ、精霊もとてつもない力を持ち、数が少ないんだという。
で、この子は海の精霊。メルセウス様の子供かもしれないという。
で、基本人に懐かないらしいが、なぜ私に懐いているか、それは私の種族が原因だろう。海王妃という種族が。
同族みたいなものだからこそ懐かれたのだ。
「ミキ様ったらね、まだ寝てるの。だからあそぼっ!」
「お姉ちゃんも今疲れててさ……。あとでじゃ、だめ?」
「だめー!」
「じゃ、じゃあ代わりにビャクロを……」
「ビャクロおねーちゃん嫌い」
これだから子供は苦手なのだ。
好き嫌いすんなといいたい。抱きついてこられるからこそ精霊は困るのであり、私もちょっとログアウトして寝たい気分なのだ。
この状態で誰かと遊べるわけがない。普通に死にそう。
「あーそーぼー!」
「はいはい……」
「やったー!」
と、精霊の子供が私の肩に乗ってくるのだった。
肩車ってやつだけど慣れない。私子供の扱い知らないんだよ。と、精霊の子供はゴーと前を指さしたのでその通りに動いてやることにした。
ワグマがログインしてくる。
「なんていうか、ほんと保育士ね」
「私子供苦手なんだよ……」
子供泣かせるならまだしも世話するというのが苦手だ。
私の苦労も知らないで笑いやがって……。私はちょっと恨みがましい目で見ると、ワグマは肩をすくめるのだった。
「代わりたいけどその子私に懐かないんだもの」
「べー」
「なんていうか、小生意気だから私も嫌なのよね」
そうなのだ。
私と親のミキ先生には従順なのだが、他にはものすごく生意気な態度を取る。ミキ先生は必死に教えているが今はたいして効果がなさそうだった。
生まれたばかりだからこその自由であり、それがちょっと困る。
「我慢して世話しなさいな」
「それが今疲れるから嫌なんだけど……」
ただでさえさっきは死にかける戦闘をしたのだ。ゲームだから肉体的な疲れはないとはいえ精神的に疲れたのだ。
殺される直前にまで追いつめられたというわけでものすごくドキドキした。初めて死ぬかもしれないという興奮があったからだ。怖いというよりかはちょっと楽しみみたいな感じ?
「ってか気づいたけどあんた体力滅茶苦茶減ってるわね」
「あー、わかった? さっき実は死にかけた」
そういうと、なんか納得したように私を見るのだった。
「だから珍しく疲れた顔をしてるのね」
「あ、わかる?」
「なんとなく無表情顔でもわかるわ」
すると、その時だった。
「こんなとこにいたんだ」
と、ミキ先生がログインしてきたので、私の肩車から降りてミキ先生のところに向かう。ミキ先生に抱きつき、ミキ先生は頭をなでていた。
「離れてくれた……」
私は自分の部屋に向かい、そしてそのままログアウトするのだった。




