それは神への嘲笑、冒涜である ③
まずい。これはまずい。
私は今、死の一歩手前まで来ていた。ぬかった。攻撃パターンが複数あるとは思っていなかった。斧をぶん投げてくるとは思いもよらず、私の足に多大なダメージを受け、足が損傷という表示がされていた。どうやら神はアバターそのものを破壊する能力があるのかもしれない。
痛覚設定も現実にしてあった。なので、滅茶苦茶痛い。
歩けない。やばい。躱せない……!
痛さのせいか声にも出せず、声に出ない叫び声が喉を刺激する。そして、メルトウスは私の前に立つと、そのデカい斧を宙にかかげた。
死ぬ。これは死ぬ。そもそも私は防御力はろくにない。
足を切られた時点で躱すことができなくなった。結構狡猾なやつだ。完全に不意打ちを食らった。
「……ここで死ぬ、のね。初めて死ぬよ」
「ガアアア!」
「ゾンビには知能がないと思っていたがお前にはもしかしてある……いや、ないな。考えてるようには見えない。きっと体の持ち主の本能が狡猾だったんだな」
「パンドラ!」
「やばいよ。ほんとに。ローキッス、やっぱり私じゃ無理だコイツ」
私は多分死ぬだろう。
だが私はプレイヤーだ。リスポーンはきっとする。だから、心配はいらない。ローキッスは私を庇おうと手を伸ばすが、斧は私を切り裂こうと目の前に来ていた。
ああ、ゆっくりに見える。きっと死ぬときって何もかもゆっくりに見えるのかな……。
「そこだッ!」
と、突然鉄の球がゾンビの眉間にぶち当たる。
「し、しし、尻拭いです! やはり最高司祭として部下の失態は私の責任です! こ、怖いですが私も戦います!」
「ガアアア!」
「ゾンビは銀に弱いのです! 銀の球を眉間にぶち込みました! 多少はダメージに……」
と、また、斧をぶん投げた。
斧はアヴェールに向かって飛んでいく。アヴェールは愕然としており、躱す余裕もないのか突っ立ったままだった。
私は魔法をうち、アヴェールを転ばせる。
「逃げろ! 死ぬぞ!」
「し、死にかけてるあなたを放ってはおけません! 私の部下のせいなのですから!」
「いいから! あんたはこのことを国王に報告することが先だろ!」
私はそう怒鳴った。
水面下でやることはきっと無理だ。本当に自分のせいだというのなら国王に洗いざらい話すべきだ。私の考えが分かったのか、小さくわかりましたといって走り去る。
メルトウスは追いかけることはしなかった。自信に満ち溢れているのだろうか。
「だが、感謝しないと。死ななかった」
私は足の負傷を魔法で治す。
そして、私は氷の壁を貼る。何度も何度も分厚く。割ろうと斧を拾い斧で切りつけるが氷にくいこんでいった。
だがしかし、分厚く張った氷も割られてしまうのだった。
「やっぱ力強いな……。なにをしても作戦を練っても強引に突破されそうだ」
早く、早く神様方来てくれないかな。




