それは神への嘲笑、冒涜である ①
人というのは醜い。
人嫌いというわけじゃないが、欲に溺れやすいのが人間だと思うのだ。宝くじが当たった人に変な宗教が勧誘してくる話を聞くが、それも神のためではなく自分のためだ。
神を免罪符にする宗教こそ罰当たりじゃないだろうか。
「はぁ、匿ってくれてありがとうございます」
と、アヴェールが息を切らしていた。
アヴェールが逃げてきた先を見ると、何やら人型の化け物が立っている。それはもう人とは呼べるものじゃない。怪物、片方の手には斧が融合されており、あれで斬られるとたまったもんじゃないだろう。
ホラーゲームかなにかか?
「アヴェール。あれは、なに?」
「私の知らないところで人体実験をしていたそうです。私としたことが迂闊でした。あのまま行くと王都が攻撃されてしまいます。どうか私たちアバロン教の不手際を解決してくださいませんか」
「アヴェールはいつ知ったの?」
「この前耳にしたんです。で、今日証拠を掴もうと尾行してたらこの怪物が出来上がっていました。これを作った本人は既に殺されています。使ってた魔法から察するにこれはゾンビ! ゾンビだと思うのです。が、私の聖魔法がなぜか効かず私じゃ太刀打ちできないのですよ!」
「お、おおう」
その怪物はゆっくりと私たちに近づいてくる。
あれがゾンビだというのなら。誰かを蘇生しようとしていたんだろうか。一体誰を? そもそも、それだけで蘇生ができるなら苦労しないだろうに。
死んだ人は生き返らない。これはゲーム内であっても常識だと思っていたが。プレイヤーは生き返るけれどね。
「ちゃんと部下を見張っていなかったアヴェールの責任だ。この件は王子に知られたらまずいぞ」
「わかっておりますとも。それに、私は愛国心はあるつもりですから。生まれ育ったこの国の王都を背徳者に無理やり蘇生させられたものに壊されるわけにはいかないのですよ。私の首でどうにかなるならするつもりです。今はこの化け物を討伐してください」
「わかったよ」
私はのそのそと歩いてくる目の前の化け物を眺める。
顔はただれており、誰かはわからない。うめき声をあげ、こちらに標的を定めているみたいだった。だがしかし、悲しそうな顔をしている。
望まず生まれてきたモンスター。背徳者はいったいなにを蘇生させようとしていたのか。
「だがしかし、やるっつっても流石に相手の実力が分からない以上……!」
と、不安に思っていると突然目の前にメルセウス様とローキッスが現れたのだった。
「無事か!? パンドラ!」
「え、あ、うん」
「危ないところでしたね。これは本当に驚きました。まさか蘇生されるなんて」
「まさか、こいつ……」
なんとなくわかってしまった。
メルセウス様が出てくるほど、ローキッスも驚いて出てくるほどそんな敵。私はローキッスのほかに殺された神を思い出した。
もしかしてこいつって。
「風雷神、メルトウス……!」




