初心者用ダンジョンにはなにがある?
私はあるダンジョンに足を運んでいた。
というのも、ニホン国の王城関係者だけが入れる書庫に興味本位で忍び込んだら暗号があった。その暗号を容易に解いてしまって、あるダンジョンに財宝が隠されているということだった。
で、レオンに見つかったんだが、レオンはため息をついてじゃあ探してきてくれと頼まれた。
「初心者用ダンジョンってぐらいだよな」
レベルも相当低い。
この入ってるダンジョン自体初心者用ということで初心者が多く訪れている。すれ違う人たちも初期装備のままだった。
この初心者用ダンジョンにもう一部屋あるとは思わないけど……。いろいろな疑問点がある。
なぜ初心者用ダンジョンなのか。
なぜ王城関係者だけしか入れない書庫なのか。
なぜ隠す必要があるのか。
なぜ暗号を施す必要があるのだろうか。
といった具合に疑問点はわくだろうが、ある結論が分かる。
それは、王城かどこかで資金を着服しているということだ。その資金はきっと暗黒街の予算。隠す必要がある資金だからこそこうして暗号化されている。なぜ王城関係者が使う書庫にあるか。それは受け渡しのためだろう。
だからこそ本の中に隠すのだ。バレないように。
で、なぜ部屋がダンジョン内なのか。
モンスターに襲われて死んだら元も子もないだろうし、強い敵がでるようなところがだめとなるとここぐらいだろう。
そして、このダンジョンは初心者用ダンジョンってこともあり警備もないので入りこみやすいのだ。
「ほんと、悪質だよねー。ね、宰相?」
「……いつから気づいておりました?」
「最初から」
私は後ろを振り返ると宰相が姿を現していた。
痩せており、白いひげを蓄えているその宰相は私に向かって微笑んでくる。それに、暗黒街の担当は宰相だったからだ。国の重要問題だからと名乗り出たらしい。
つまり、着服出来て王城関係者しか入れない書庫にいけるのは宰相ぐらいなのだ。
「私があの暗号があったと見つかった際、あなたは通りかかりましたもんね? きっとあれはちゃんと受け取ったか確認するためじゃないですか?」
「……」
「まだ受け取る人はわかりませんが、誰が受け取るんですかねえ。ま、それは後から拷問でもしてはきださせればいいでしょうけどね」
すると、宰相はナイフを構える。
「やはり、あなたは恐ろしい。だからあれほど反対だったんです。魔王軍と友好関係を結ぶのが。私は貴方を始末しないといけません」
「お? 焦ってないの? いや、焦ってるか。私を生かしておいたらこのことがばれてしまう。でも、もう遅いですよ? 後ろを見てください」
と、後ろを振り向かせると、護衛に囲まれたレオンがいたのだった。
「この通り、証人はばっちりいます。あなたはつけてきたつもりですけど、つけられてたんですよ」
「……やりやがってくれましたねこのクソガキがッ!」
宰相は血相を変えて手に持っていた剣で私を切りつける。
「そんなの効きませーん!」
私は宰相が持っていた剣に向かって魔法をうつと、剣が飛んでいったのだった。
そして、兵士が総力をかけて取り押さえ、ロープでぐるぐる巻きにされていた。
「さて、これで片付いたか。では、帰るぞ……」
「帰るぞ、じゃないですよ。受け渡すつもりだって言ってたじゃないですか私が。受け渡すなら一人おさえたところで意味ないでしょう?」」
「そ、そうか。そうであるな」
「で、多分その犯人は宰相の部屋にいますよ」
「なぜわかる?」
「私がそう導いたので」
そういう風に仕向けただけだ。
宰相が書いた紙の筆跡で同じように本に挟めておいたのだ。紙を。アデュランに頼み、私が咄嗟に用意した紙を持たせて、宰相が書き換えて本に挟めたらばれないように取り換えてと頼んでおいた。
だから、勘違いした人が宰相の部屋に入っているだろう。
「我が国の不祥事ながら解決するのは魔王軍で本当に情けない……」
「気にすんなって。ほら、待ちぼうけてたら帰るかもしれないから急ぐよ」
「ああ。わかっている」
モルを呼び、私とレオンだけは先に王城に戻るのだった。




