大晦日の日 後編
夜十一時。
私たちは着付け師さんの手によって振袖を着ていたのだった。私と月乃は別にいいんだが、白露がちょっと不満そうにしている。
「動きづらいから嫌なんだが」
「いいじゃない」
「去年までこういうの着てなかっただろう」
「やっぱ振袖って女の子の夢じゃない? レンタルじゃないし買ったものだから終わったらあげるわ。あなたたちのために特注したのよ」
たしかに私の体型にフィットしている。
去年なかったのは去年は白露の家でやったのでみんな私服で参拝に行っていたからだ。その前の年は私の家でやって、私も私服。
月乃ぐらいだ。こういうのできるのは。材質も結構いいものだしな。
「では、メイクしますのでこちらへ」
「メイクもするのか!?」
「いいじゃない。少しでも綺麗になれれば」
「冗談じゃない! メイクなんてもんをしたら……!」
「したら?」
「私が私じゃなくなりそうだ!」
「そんなに自分じゃないように見える濃いメイクはしないわよ……」
私は椅子に座り、メイクも整えてもらった。
私も基本メイクとかしないし、身だしなみもザ・適当って言う感じで手入れすらしてないのだが。私はメイクをされると、目の下のクマが隠されていた。
だよね。私のチャームポイントなんだけどダメなのね……。不健康そうだもんね……。
みんなメイクが終わったのか、あとは行くまでの自由時間を好きなように潰してくれと言われたのだった。
白露は若干うなだれている。
「メイクなんて普段しねーからむず痒いぞ」
「あら、私はたまにするわよ? っていうか、あんたら女子としてのプライドも意識もないからしないとは思ってたけど……」
「まあ、メイクを買う費用がもったいないし、取り繕った自分より自然体を見てほしいから……」
「何が自然体よ。少しは偽ることをしなさい。嘘が得意なあんたなら余裕じゃない」
「そういうことじゃないと思うけどね」
それに、メイクってできそうだけどめんどくさい。
「ああ、今すぐ顔洗いてえ」
「ダメよ。メイク落ちちゃうでしょ」
「すっぴんじゃ本当にダメか?」
「だーめ。メイクしてくれた人たちのことも考えなさいな」
「ぐっ……」
「可愛くなってるのは本当じゃない。自信持ちなさいよ」
「可愛い可愛くないの問題じゃないんだが」
白露はものすごくごねている。
「っていうか、時間イイの? 結構な行列なるだろうしもういったほうがいいんじゃない?」
「そうね。外寒いから暖かい格好は忘れないで」
「わかってるって」
私は上着を羽織り、草履をはく。
足袋がくるぶしまでしかないので寒いが普段ミニスカで学校に通ってる私の敵じゃない。
「じゃ、出発!」
私たちは神社に向けて歩き出した。




