大晦日のゲーム
12月31日。
ゲームもカウントダウンが始まっていた。街ゆくNPCたちもどこか浮かれており、ショップも年末セールということで全商品が半額になるということもやっている。
ゲームも年越しをするんだ……。
「師匠! ソバというものを食べてみたいです!」
「ソバか! うめえよな! 俺様は年末には開発の手を止めて食べてたぜ!」
と、レブルとカイハがいっていた。
ニホンという国名だからソバもきっと広まっているだろうとは思ってたしメニューにも載ってあるところもあった。
だがしかし、レブルはオールランド王国出身だからかソバを食べたことがないのだろう。
「ソバにはいろんなのがあるんだぜー? 盛り、かけ、天ざる、テンプラとかな! 俺様はテンプラだがなあ!」
「たくさんあるんですか!? 悩みますね……」
ソバ店はものすごく行列になっており、私たちは先に並んでいた。
店に入り、レブルがメニューを眺めている。私はとりあえず既にメニューは決めてあった。
「私はとろろそばかなぁ」
「あんなどろどろとしたもの食うのかよ?」
「あれね。長いもをすりおろしたもので疲労回復効果があるっていうよ」
「へぇ、なら今年は俺様は……いや、テンプラは裏切れねえ!」
「わ、わわ、私は、私はどうしよ……」
レブルは決めかねているようで、悩んでいると、私たちの隣にコトと何か小皿が置かれた。お通し? 居酒屋か?と思うと、この前のお礼ですと述べていた。
お礼? 見覚えがないが。
皿の上にはなんとお魚の刺身が盛り付けてあったのだった。
「この前のイベントであなたのお仲間であるワグマさんに助けてもらったんです。そのお礼ですよ。ワグマさんによろしく伝えておいてください」
「ああ、そうなの。でも、それは自分で言ったほうがいいよ。その方がワグマも喜ぶさ。いつでもきていいから」
「はい。蕎麦をうちにいかせてもらいます」
「ああ、出前じゃなくてお礼だけでいいからね?」
「はい。わかっておりますとも。ではソバをうつので」
と、戻っていく。
ワグマも人助けしてんだなぁと思っていると、今度は隣のお客様からですという声が聞こえ、今度は武器が目の前に置かれていた。
隣を見るとまた知らない人。
「この前はあんたの仲間のビャクロってやつに助けられてよォ。渡しておいてくれねェか?」
「え、いいですけど……」
私は武器を受け取る。
ワグマもビャクロも人助けしてんのか。へぇ。優し……。私へのお礼の奴一切ないじゃん。いや、確かに人助けという人助けはゲームでしたことないし、むしろ悪さしかしてないけど……。
情けは人の為ならずっていうしやっぱりいいことをしたら返ってくるもんだなぁ。
「決めました! 私はザルソバにします!」
注文が決まったのでオーダーすることにしたが。
私の気分はいまいち釈然としない。




