罠にはまった私たち
瘴気の洞窟に来た。
洞窟内は薄暗く、だけどたしかに禍々しい気配がある。
「気をつけてくださいね。錯乱状態という状態異常に確率でなるんです。この洞窟に入ると」
「ん、なら」
私はスキルを使用する。
「状態異常効かなくしたから大丈夫」
私たちは中に入っていく。
モンスターはどうやらいないようだ。が、奥に進むにつれ暗さが増していく。光がない。メンバーの一人がランタンを取り出し、照らし始める。
こつん、こつんと足音だけが洞窟内に響き渡った。
「なんていうか肝試しだよなやっぱり」
「ちょっと、怖いからやめてよ」
「相変わらずビビりだなー」
「幽霊……」
「呼んだ?」
と、後ろからにょっと出てきたのは死霊姫となっていたアップルだった。
その幽霊に驚いて全員が悲鳴を上げていた。楽しそうにけらけら笑っているアップル。
「屋敷に囚われてるんじゃなかったの?」
「いやー、未練解決したら自由に動けるようになったのよね。だからこの薄暗い洞窟がいいなって思ってたまに来てるのよ」
「地縛霊じゃなかったのかよ……」
未練解決したら動けるというのは初耳だ。
普通成仏するんじゃないだろうか。死霊姫ということで魔物となっているから成仏ということじゃなく地縛が解けたっていうことなのかもしれないが。
だがしかし、アップルが来たことによって他の奴らビビってるぞ。
「どうしたのかしら」
「いや、この洞窟に大悪魔パビロンがいるっていうからさ」
「大悪魔? そんなのいないわよ?」
「え? わかるの?」
「ええ。この洞窟隅から隅まで探索したけれど誰もいなかったし、悪魔の気配も感じないのよね。悪魔っていうと私も気配感じるのだけれど」
「…………おい、依頼主は何て名前だ」
「え? ああ、えっと、???という変な名前で……」
なるほど。
「罠にハメられてるなこれは」
「え?」
「以前来た時どこまで進んだ?」
「えっと、誰かが怖いっていって引き返したので最後まではいけてませんが途中ぐらいまでは……」
なるほど。最後までいってはいけない。
恐ろしい罠があるというわけだ。行ってみたいという好奇心がないわけじゃないが、さすがに罠とわかっていくほど馬鹿じゃない。
誰もいないということは、きっと奥の部屋に行ったとき何かが起きる。それは厄災か、それとも幸運なのかは知らないが。
「これ以上先は進んじゃいけない。悪魔がいないとなるとその悪魔はっ……!」
「魔の気配を感じるわ! 近くに悪魔がいるッ!」
すると、私たちの背後に誰かが立っていた。
その誰かはにやりと笑う。
「気づいてしまいましたか」
「お前、これの依頼主だな。誘い込むために自ら依頼したな?」
「ご名答。あなたはとても賢いようだ。合格です」
すると、黒い瘴気が私を包み込んだ。
メンバー数人が手を伸ばすが、私の体はどんどんと吸い込まれていく。わかっていたのに油断していた。
そして、私の視界は暗転し……なかった。
「な、なんですかこの力はッ! 神の力ッ!」
「ああ、神の眷属だからね」
「神のしもべというわけでしたか……。あなたはやっぱり不合格です! 神に忠誠を誓うもの、神のしもべは総じて不合格! 始末して差し上げます!」
「始末? 不合格? 私は一生で一度も不合格なんて言われたことないんだよ! 私の経歴に傷をつけるのは許さないからな」
私はメンバーを睨む。
「早く逃げろ! お前らじゃ無理だ!」
「は、はいい!」
「頑張ってください!」
「アップル! 逃げ道を確保してやれ!」
「わかったわ! ほら、いきましょう」
私は大悪魔パビロンと戦うことにした。




