下準備
翌日。私は一年四組のところにきていた。
そーっと覗いてみると、一人で俯きながら過ごしている。たまに女子が陰口を聞こえるように言って笑ってはいるが、それ以外はさほど普通のクラスと関係がない。
が、この空気が問題だ。
「よォ! 春風さん! 元気?」
「えっ……」
なので空気を読まず私は源さんに挨拶をするのだった。
教室内は誰コイツ?という雰囲気になっているが、私のことを知ってる人はだんだん顔を青ざめていた。がくがく震えている。
私はにっこりと笑顔を作り、源さんに近づく。そしてこっそり耳打ちした。
「助けてほしいんだろ?」
「お姉さま……」
「お姉さまって……。ま、とりあえず後ろには私がいるってことを匂わせとけ」
私を自ら敵に回したいって言う人は少ない。もし仮にいじめてきたとしても問題はない。対策は絶対にするさ。
執念深いからさ。やられたらきちっとやり返さないと気が済まないからさ。
「いやー、とても面白かったよ君が紹介してくれた小説!」
「ど、どうも……。ほ、他にもまだあるので……」
「まじで? なら、楽しみにしてよっかなー。明日持ってきて貸してくれない?」
「は、はい!」
そういうと、クラスの女子の一人で爪をいじっている女の子の目が光った気がした。
持ってきて小説を破られるパターンだ。私はにやりと笑う。明日が楽しみだ。
翌日、四組は体育らしい。
更衣室に着替えに行っていた。私はというと、ちょっと腹痛でと抜け出し、四組の教室に向かう。すると、四組の教室から笑い声が聞こえた。
私は携帯を懐から取り出し、教室をのぞかせる。そして、私もちらっと覗いていた。
「萌やりすぎじゃなーい?」
「あの恐ろしい夢野に貸す本だ。貸せないってなると夢野怒るんじゃね? あいつ終わったな」
「あーあ無残な姿」
「あはは! 夢野に追い込まれろっての! さ、いくぞ!」
といって教室を出ていくようなので隠れる。
証拠はばっちりとらえられたので、あとは先生にこれをチクってもいいが、それじゃ私の気が収まらない。
追い込まれるのは貴様だって言っておこうか? まず、簡単に罠にはまる時点でバカなんだよ。いじめだろ? もっとずる賢くやらなくちゃあなあ。
わたしは黒板に向かい、チョークを手に取る。
『萌さんがいじめを!? 女ってこわ~い~』とでかく書く。
下に一年一組の生徒よりと書いておくのも忘れない。そして私は教室に戻るのだった。いじめをする生徒も、それを看過する生徒も許せないというわけではないが、巻き添えを食らってもらう。
すでに証拠はあるんだからな。
「パン子、さっき連絡があったぞ。父が源の親を傷害で逮捕したらしい。家宅捜索したらまあ血の跡が出るわ、傷の写真を撮ってたわで証拠が満載だったらしい」
「それに、保護はうちでするわ。ちゃんと万全の態勢を整えた。いじめを糾弾するなら今じゃない?」
「そうだね。でもあいつらの親がモンスターペアレントの可能性もあるさ。私は親代わりとして源の隣に立つ。それとこれ、これコピーしといて」
「わかったわ」
決戦は明日だ。
短期決戦。勝つのは私たちだ。
小説書くの楽しい。
まだ書き溜めてあるのが証拠




